ひどすぎて言葉にならない
今年の冬至まで、今日を入れて3日となった。ここ数日は1年で最も夜が長い日に向かって、深い闇を進んで行くような気分。だけどネガティブな印象は一切ない。どちらかといえばデトックスのような雰囲気を感じている。
人間の意識が自然の摂理と連動しているのなら、今の時期は自分の心の闇を表面化させるチャンスかもしれない。闇のままで放置しているから、得体の知れない恐怖に怯えることになる。蓋を開けてみれば、意外となんてことないかもしれない。
冬至が過ぎれば流れが反転して、光が増す方向に転じる。だからここ数日は自分の心の闇に向き合って、虫干してやるのにいい時期だと思う。そして22日の冬至が来たら、その闇に光を当ててあげたらいい。そう思うだけでワクワクしてきて、冬至の到来が楽しみになってくるよね。
ところが、もしかしたら光が当たるのは無理かもしれないと感じる深い深い闇がある。それは中華人民共和国という国家が抱える闇。とても興味深い本を読んだ。
『マオ 誰も知らなかった毛沢東』(上巻)ユン・チアン、ジョン・ハリデイ共著という本。
毛沢東の伝記本だけれど、かなり突っ込んだ取材がなされた書籍になっている。存命している人の聞き取り、隠されていた資料の暴露等に基づいて、限りなく毛沢東の真実の姿に迫っている。
この本は上巻で、毛沢東が1893年に生まれてから、1949年に中華人民共和国が誕生して最高指導者になるまでの出来事が書かれている。若い世代の人たちにとっては過去の人物だろうけれど、ボクが中学2年生のときまで存命されていたから、かなり身近に感じている。
実は以前から現在の中国がどのようにしてできたのか興味を持っていた。蒋介石が率いる国民党と内戦状態になり、蒋介石は台湾に逃亡したことくらいは知っている。でもどのようにして中国共産党があの広い大地を制覇したのか知らなかった。
この上巻を読めば、ほぼその全貌がわかる。そして、恐ろしさに震えることになる。どれだけこのブログでその恐怖を伝えようとしても無理だと思う。それほど深い闇があの国の背景には存在している。
中国共産党を作ったのはソ連であることは想像していた。毛沢東はソ連と連携することで、蒋介石を中国大陸から追い出した。簡単にいえばそういうことになるけれど、その歴史に立ち会った中国の人たちにとっては生き地獄でしかなかったと思う。その苦悩は決して日本人には理解できないだろう。
日中戦争において、日本軍が南京で大虐殺を行ったと中国は主張している。現在ではそれが捏造だという証拠や証言が集まり、疑問視する意見が優位を占めつつある。だけどもし南京大虐殺が事実だったと仮定しても、毛沢東はもっと恐ろしいことを自分の国の人間に行っている。
日本が敗戦を宣言したのち、ソ連は中国に侵攻する。日本軍を追い出すためだが、その覇権をめぐって毛沢東と蒋介石は争う。長春の城に籠城した国民党に対して、中国共産党は兵糧攻めをする。何十万という一般の難民がその城に逃げていることを知っていながら……。
その結果がどういうことになったか想像はつくと思う。南京大逆説の数字がかすんでしまうほどの死者を出している。でもそれは氷山の一角。毛沢東は自分の権力を確保するために、何千万人という自国民を殺害している。
戦争ならまだしも、『粛清』という恐ろしい行為によって罪もない人を追い詰めた。共産党に逆らうとどういうことになるかのという、見せしめだけのためにだよ! スターリンやヒトラーのやったことが、可愛く見えるほどの残虐性を毛沢東は持っている。おそらく完璧なサイコパスだろう。
上巻だけで600ページ近くある本で、地名や人名を確認しながら読み進めたので、読了するまで1週間近くかかってしまった。でもそのかいあって、現在の中国がどのようにして設立されたか理解することができた。ただあまりにひどすぎて言葉にならない。
昨日のニュースを見て、現在の中国にもまだその闇が残っていることがわかった。
ボクはこのニュースを見て驚くよりも、現代の中国も少しは進歩したなと思ってしまった。その理由はこの本を読んだからだと思う。
だって昭和30年ごろは、公開裁判ではなく『公開処刑』だったから。住民は広場に強制的に集合させられる。もし参加を拒否すれば反乱分子として『粛清』を受ける。大人も子供も広場に集められた。そしてその前で処刑が実行される。くり返すけれど20世紀半ばのことだよ。
少し時間をあけてから下巻を読もうと思っている。下巻には『文化大革命』という、もっと恐ろしい出来事が待っているので、続けて読むと深い闇に影響されそうだからね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。