絶望しかない社会
今日は朝からずっといい天気が続いている。でも寒いよなぁ。床暖房を入れているのに、ソファにすわって仕事をしていると、手が冷たくてかじかんでくる。
そんな寒いなかでも、平和に暮らせるのは幸せなもの。そんなことを真剣に感じてしまう本を読んだ。
『マオ 誰も知らなかった毛沢東』下巻 ユン・チアン、ジョン・ハリディ共著という本。
毛沢東の伝記本で、ようやく下巻を読了した。600ページ近くあるけれども、2時間で100ページ読むのもしんどいほど文字がぎっしり。だから読了するのに5日もかかってしまった。
以前のブログでも書いたけれど、上巻は毛沢東が生まれてから中華人民共和国ができるまでの話。この下巻はそこから続いて、毛沢東が死去するまでが書かれている。タイトルにある通り、公にされていなかった毛沢東の実態が明らかにされている。
上巻でもかなりショックな内容だったけれど、下巻はさらにひどい。この下巻の最後に、インタビューに答えてくれた人の名前が列挙されている。それだけで10ページ近くも費やすほどの数で、この本が真実に迫ったものであることがわかる。
1947年以降の毛沢東は、中国を大国にすることしか考えていなかった。もっと正確に言えば、マジで世界を支配したいと考えていたらしい。そのためには国民の命なんてどうなってもいい。使えるだけ使ってやろうという発想だった。
ボクもこの本を読んで初めて知ったけれど、1950年の朝鮮戦争を影で操っていたのは毛沢東だった。金日成をいたぶって韓国へ攻め入るようにう仕向けた。そしてその支援として中国軍を大量に派遣している。
それはソ連の中国に対する介入を防ぐことと、アメリカの脅威をあおってソ連から軍事技術を供与させるのが目的だった。そのために中国の兵士を朝鮮半島で何万人も死なせている。
金日成はすぐに戦争をやめたがったけれど、毛沢東は無理やり戦争を長引かせている。それはソ連から原爆の技術を奪うため。そして結果的に原爆を手にすることになった。あのベトナム戦争も同じ理由で、毛沢東が仕掛けたものだった。
そんなソ連の軍事技術を買い取るには、費用が必要になる。だけど中国に金はない。そこで農作物をソ連に渡すことにした。1年で収穫できる以上の食料を提供することを約束して、中国人を飢えさせた。大量に餓死者が出ていても、まったく気にかけない。
そのことを諌める部下が現れると、即座に粛清された。つまり殺されてしまう。そしてその延長で強行したのが、あの悪名高い『文化大革命』という名の大粛清。自分に従わない人間を黙らせるため、若い学生や子供を利用して文化人を中心に死へと追いやった。
毛沢東が生前に死なせた国民の数を知ったら驚く。戦争で死んだ人を除いた数だよ。
なんと7000万人の自国民を、不当な死に至らせている。7000万人だよ!
毛沢東が実権を握っていた時代に生きていた中国の人たちは、心休まるときがなかっただろう。だって密告がはびこり、いつ理由もなく殺されるかもしれない。食べ物がなくて餓死しても放っておかれる。それは絶望しかない社会だった。
毛沢東といえば、共産主義の代表のように思われている。だけど彼はそれほど共産主義を信じていたわけでははない。蒋介石がいた国民党に所属していたこともある。たまたま権力を握って自分が支配者になるために、共産主義を利用したに過ぎない。
世界を支配できるのなら、なんでもよかったのだろう。イデオロギーなんて、後づけでしかない。前にもブログで書いたけれど、毛沢東に比べたらヒトラーがマシに思える。とにかく嫌悪感しか感じない所業だった。
今の中国が、こうでないことを祈るしかない。だけどそれは甘い期待なのかもしれない。共産党の一党支配は変わらず続き、いまだに人権問題で非難されている。そして近隣諸国に対して、侵略まがいのことをくり返している。
そして今朝のブログでも書いたけれど、中国は経済的にも大成長している。まさに鬼に金棒という印象を持ってしまう。せめてグローバル化がうまく働くことで、国際社会の評価を意識してくれたらと願うばかり。
とにかく中国について感じていた様々な疑問が解消した本だった。後味は良くないけれどね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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