SOLA TODAY Vol.532
ここのところネットを賑わしている、漫画の海賊版サイト。無料で最新の漫画が読めるということで、若い世代がハマっている。
その一方で、著作権を有する漫画家からは、そのサイトを非難する声明がいくつも出されている。NHKのネット記事でも取り上げられていた。
どのくらいの数の海賊版サイトがあるのか、詳しくは知らない。ボクが知っているのは『漫画村』というサイト。利用したことはないし、その気もないけれど、ちらっとサイトを見たことはある。たしかに出たばかりの漫画が並んでいる。
この記事では、『あしたのジョー』等で知られているちばてつやさんが、苦言を呈しておられる。このままでは若い漫画家が育たない、と切実に訴えられている。そりゃそうだよね。
かなり売れている漫画家の人たちでも、こうしたサイトのせいでコミック本の売上が落ちている。出版不況のなかで苦しい経営を支えてきた漫画の売上が落ちると、営業を継続できなくなる出版社も出てくるだろう。
そうなるとこれから世に出ようとしている漫画家志望の人に、チャンスがめぐって来なくなる。出版社は商売なので、利益を見込めなければ本を出すことはできない。
ところが困ったことに、どうも著作権違反での取り締まりは難しいらしい。少し調べてみると、利用者に漫画をダウンロードさせる仕組みになっていない。ネット上にアップされている漫画を『画像』として扱うことで、『画像の引用』ということで提供している。
例えばこのブログで、どこかの記事の写真を引用するような感覚。屁理屈なのはわかっていても、法律的に取り締まることができない。そして著作権違反は親告罪なので、著作権を有する人たちが訴訟を起こす必要がある。その金銭的負担と時間をのロスを考えると、どうしても二の足を踏むことになるらしい。
さらに海外のサーバーを使っているので、日本の法律が適用できない。このサイトを考えた人は、かなり頭のいい人だろう。法律を熟知していると思う。
よくないことはわかっていても、どうしようもないというのが現状なのだろうね。そして困ったことに、この『漫画村』と同じようなシステムが国や自治体によって運営されている。
それは『図書館』というもの。
もちろん図書館は、本を無料で購入しているわけじゃない。だけど人気のある新刊本などは、何十冊と大量に購入している。そしてそれを読もうとして、大勢の人が予約待ちをする。利用者の立場としては、『漫画村』とたいして変わらない。つまり『無料の貸本屋』だということ。
図書館が新刊本の購入数を減らすだけで、どれほど本の売上が伸びるかという試算を見たことがある。図書館のせいで買い控えをしている冊数は、無視できないほどの数になる。
ボクは大量の読書量を図書館に依存しているから、そうしたことに加担している。だから『漫画村』のようなサイトを否定できる立場にない。だけど著者としての気持ちは、痛いほどわかる。
この先、法律が対応するかどうかわからない。でも賭博を禁止しながら、パチンコ景品の換金を黙認している日本だから。そうそう簡単にはいかないだろうね。漫画でも小説でも、作り手や版元が頭を悩ませることは尽きないんだろうなぁ。
だけど「タダほど怖いものはない」という言葉は意識したほうがいいかも、昨日のツイートで見かけたけれど、『漫画村』のサイトで漫画を読んでいると、仮想通貨のマイニングのソフトを取り込むようになっているらしい。
使用しているパソコンやスマホのCPUが、勝手に使われている可能性がある。事実かどうかはわからないけれど、複数の報告が見られる。ある程度のリスクがあることを、頭にすみに置いておくべきかもね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。