手紙を書く理由
今日で2月も終わり。もうこの気温だと、名実ともに春だと言っていいだろうね。
買い物に出かけた帰り道、神戸名物の坂道を登っていると、マジで暑いと思った。そして今夜は、春一番になるかもしれない突風が吹くらしい。雨もかなり降るようだね。そうしてひと雨ごとに、春が近づいてくるのだろう。
関係ないけれど、春一番という言葉を見ると、ついキャンディーズを思い出してしまう。昭和世代のたわごとだけれどねwww
新作の小説も書き出して一週間ほどになり、まずまず順調にスタートしている。と言ってもまだ2万字弱だけれど。そしてどこに向かうのか、作者であるボクも見えてこない。ちょっとしたプロットと、ラストシーンだけしか決まっていないからね。とにかく毎日休まず書き続けていくつもり。
ボクがあまり読まない小説のジャンルに、恋愛小説がある。物語に恋愛がからむのは避けられない。だけど恋愛そのものを扱った小説を、あえて手にすることは少ない。だけどとても好きな作家なので、恋愛小説だとわかっていたけれど読んだ作品がある。
『四月になれば彼女は』川村元気 著という小説。
マルチな活躍をされている川村さんのメインは、映画プロデューサーだろう。最近では『君の名は。』で大ヒットを記録されている。だけど作家としても素晴らしい才能を持っておられて、『世界から猫が消えたなら』、『億男』という小説は、めちゃくちゃ面白かった。そして感動した。
川村さんの小説として、この作品は3冊目になる。過去の2作品を読むと、その視点の独自性に感動する。だから川村さんが、どんな恋愛小説を書くのかとても気になっていた。
主人公は藤代という若い精神科医。弥生という獣医と結婚が決まっていて、その準備に余念がない。ところが4月になって、初めて交際した女性から手紙が届く。春という名の女性で、大学のカメラ部の後輩だった。別れて、すでに6年が経っている。
その4月から始まって、5月、6月と章が続き、ラストは3月で終わる。だけど時系列に進むのではなく、現在と過去が入り混じっている。その時間構成が、とても巧みに組まれている。
藤代はどこか煮え切れない男。読んでいてもどこかイラつく。弥生のことが本当に好きなのかわからない。結婚がまじかに迫っていて、幸せなはずなのに幸せそうに見えない、と婚約者の弥生に言われている。そんな藤代に元カノから手紙が届くから、どこか不穏なものを感じる。そしてその手紙が原因で、弥生が失踪することになる。
なんだ、こんなドロドロした恋愛小説なのか、と思って読み始めた。まるでオフコースの曲の歌詞のように、女々しいやつだよなと思っていた。こんな小説で感動するわけがない。ましてや泣くもんか。そう思って読み進めた。
だけどその考えは、ボクの早合点だった。
途中から涙が止まらない。エンディングのシーンは予想どおりだった。これしかない、と思っていただけに、川村さんと同じ考えでうれしかった。だけどわかっているのに、もう大変。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになった。今思い出しても、感動で泣けてくる。
まだ読んでいない人もいるだろうから、ネタバレはしない。だけどポイントだけ記しておこう。
それは春が手紙を書いた理由。なぜ元カレである藤代に、春は手紙を書いたのか? 彼女は何を伝えたかったのか?
なぜ人は恋をするのだろう。そしてその恋は、なぜ変わって行くんだろう。結婚とは? そして人を愛することとは?
そんなことを、登場人物たちが読者に投げかけてくる。最高に素敵な恋愛小説だった。気になる人は、ぜひとも読んで欲しい。だけど涙と鼻水をふくタオルを用意した方がいいよ。もう大変だからね。
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