同じ痛みだから、分かりあえる
少し気温は低めだけれど、久しぶりに気持ちのいい快晴。いよいよ来週からは本格的な春に突入しそうな予報。
そんな春の訪れを告げてくれる。満開になった早咲きの桜に出会った。
こんな花を見ていると、「浮かれ出す」という気分がよくわかる。フラフラと、気の向くまま歩きたくなるよね。
そして春は恋の季節でもある。カラスや鳩たちは雛鳥を育てるだろうし、あちこちで子猫も生まれるんだろうなぁ。
そんな恋の時期に、風変わりな恋愛映画はどうだろうか? 何気なく見たけれど、とても素敵な作品だった。
『世界にひとつのプレイブック』(原題:Silver Linings Playbook)という2012年のアメリカ映画。写真のブラッドレイ・クーパーとジェニファー・ローレンスが主演している。この作品で、ジェニファーはアカデミー主演女優賞を受賞している。
ブラッドレイが演じるパックは、躁うつ病で病院から退院したばかり。妻の浮気現場に遭遇して、浮気相手を殴り倒す。その結果入院することになったが、退院後は、元妻と接近禁止命令が出ている。
ジェニファーが演じるティファニーは、夫を事故で亡くしたばかり。そのきっかけが夫婦の性生活だったので、彼女は精神を病み、セックス依存症になってしまう。そのことが理由で解雇され、セラピーに通うという生活をしている。
パックの元妻であるニッキは、ジェニファーの友人でもある。妻とよりを戻したいパックは、ジェニファーを通じて妻に手紙を渡そうとする。だけどそれは法律違反。
そこでティファニーが持ち出した条件は、自分と一緒に社交ダンスの大会に出ること。ダンスなんてやりたくないパックだけれど、なんとか元妻とやり直したい。そこで嫌々ながらもダンスを練習する。
そんな状況にアメフトで呑み行為をしている父親がからんでくるから、ややこしいことになる。全財産を、アメフトの試合と息子のダンス大会に賭けることになる。その父親をロバート・デ・ニーロが好演している。
ここまで来ると、エンディングは想像できるよね。ダンスを通じて、二人が恋仲になるのは必然。そしてそのとおり、ハッピーエンドで終わる。
ある意味ありふれたストーリーなんだけれど、この映画は多くの賞にノミネートされ、いくつも受賞している。その理由は、主役の二人の演技だと思う。
心を病んでいる二人だから、常に情緒不安定。トラブルばかり起こす。近所を巻き込むし、家族だって生きた心地がしない。とにかくはちゃめちゃ。だけどダンスを通じて、そして互いの思いやりの心を通じて、二人の心が少しずつ癒されていく。
二人とも傷つきやすい人間だった。耐えきれないことが起きて、心を病むしかなかった。その同じ痛みを共有しているから、二人は分かりあえたんだと思う。きっと自分の気持ちをごまかすことのできない、ピュアな心を持った二人だったんだね。
そんな難しい役を、主演の二人は見事に演じていたと思う。だからこそこの映画が評価されたのだろう。だからラストでパットがティファニーを追いかけるシーンでは、グッとくる。手紙の伏線もわかっていたけれど、やっぱり泣ける。恋の季節にぴったりの、素敵なラブストーリーだった。
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