自動車版の『ゴーン・ガール』
人間という生き物は、つい意味を考えてしまう。
どんなことにも理由があって、それによって反応が起きると思い込んでいる。だけど意味なく心が動くことなんて、いくつもある。
例えば音楽。ボクは最近マルーン5にハマっているけれど、2011年にリリースされた『Overexposed』というアルバムのボーナストラックに、『Wipe Your Eyes』という曲がある。
歌詞もいいんだけれど、このサビのメロディを初めて聴いたとき、意味もなく涙が出た。理由なんてない。このメロディを耳にするだけで、心が揺さぶられて涙が流れてくる。今日も仕事をしながら聴いていて涙ぐんでしまった。同じように感じるかどうか、試して欲しい。
そして映画でも同じことが言える。意味なく面白いと感じる映画がある。冷静に考えたらありえない設定だったり、ばかげたシチュエーションなんだけれど、なぜか面白いと感じる。これは感情的なものだから、意味を探しても意味がないwww
『クリスティーン』という1983年のアメリカ映画。そのクリスティーンとは人間の女性ではなく、この赤い自動車のこと。原作はスティーブン・キングで、監督はジョン・カーペンター。この二人の組み合わせだから、ホラー映画だとわかる。それもジョンが監督だから、B級ホラーの香りがプンプン。
これは車が意思を持っているという物語。クリスティーンと呼ばれているので、どうやら性別は女性らしい。なぜかと言えば。主人公の男子高校生の彼女に嫉妬するから。もう少しで殺そうとまでした。きっとゲイではないと思う。
わかりやすく言えば、自動車版の『ゴーン・ガール』というような作品。世の男性を震え上がらせた『ゴーン・ガール』のエイミーに負けないほど、クリスティーンは怖い。
物語は1957年のデトロイトの車工場で始まる。製造途中で勝手にこの車に入り、葉巻の吸い殻を落とした男性がいた。翌日に、車内で遺体となって見つかっている。そしてその20年後。ボロボロになったクリスティーンに一目惚れした人物がいた。
それが主人公のアーニー。どちらかと言えばいじめられっ子で、メガネをかけた頼りない男子高校生。友人のデニスに助けてもらわなければ、不良たちにボコボコにされてしまうような人間。
そのアーニーが廃車寸前のクリスティーンに心が惹かれ、ピカピカの新車のようにDIYで修理する。ところがその直後から、彼の人格が変わる。どのように変わるかと言えば、こんな感じ。
左がビフォーで、右がアフター。キース・ゴードンという俳優さんで、その変貌ぶりが見事だった。まったく別人にしか感じない。急に自信を持って、高校で一番の美女を恋人にする。そんなアーニーにムカついた不良たちは、こっそりと忍び込んで車を破壊してしまう。
だけど普通の車じゃない。クリスティーンは意思を持っているだけでなく、自己治癒力もある。一瞬で元の新車に戻ってしまう。もしクリスティーンが人間の女性だとしたら、レイプされて殺されたようなもの。
当然ながら、クリスティーンの復讐劇が始まる。これはマジですごかった。『ゴーン・ガール』も真っ青だからね(汗)
ボクとしては、かなり楽しめる映画だった。ついクリスティーンに感情移入して、不良たちがやられるのを応援してしまう。ラストシーンがまたいい。
スクラップにされたクリスティーンが、かすかに動くシーンで終わる。まるで『キャリー』のラストシーンにそっくり。そう言えば『キャリー』も原作はスティーブン・キングだよね。
原作は、車の持ち主の怨霊が乗り移っているという設定らしい。映画なので、車が意思を持っているという設定に変えられたらしい。こうなると原作が気になる。ということで図書館で手配した。映画とのちがいが楽しみ。とにかく意味なく、面白いと感じた映画だった。
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