孤独のススメ
春爛漫という天気なので、今日から服装が春仕様になった。神戸の桜は場所によって微妙にちがうけれど、早いところで7分咲き、遅いところで3分咲きというところかな? これから10日くらいは、どこに行っても桜が楽しめそう。
今の時期は、桜に負けじとユキヤナギも満開になっている。Instagramにも書いたけれど、本当にいい季節だよね。
自宅近くに石屋川公園という桜の名所がある。少し早いけれど、ちょっと様子を見てきた。
もうひと息で満開になりそう。今週のなかばには、きっとこの木の下で宴会をしている人がいるはず。
そりゃこんな綺麗な花を見ていたら、一杯飲みたくなるよね。これから2〜3週間は、ボクもあちこちに行く予定。仕事もするけれど、じっとしていられないからね。
さて、珍しい映画を観た。それはオランダ映画。生まれて初めて観たけれど、とても素晴らしい作品だった。
『孤独のススメ』(原題:MATTERHORN)という2013年のオランダ映画。ロッテルダム国際映画祭やモスクワ国際映画祭で、高い評価を受けている。特に「観客賞」というものを受賞していて、一般の人たちに支持されている。
主人公はオランダの田舎に住む初老のフレッドという男性。この写真では手前にすわっているのがフレッド。交通事故で妻を亡くし、ひとり息子はあることが原因で家を出ている。たった一人で孤独な生活を送っていた。
とても真面目で厳格な人間。朝食や夕食は決まった時間に食べないと許せない。もし1分でも早く準備ができたら、時計とにらめっこしてその時間が来るまで待っているような性格。
そんなフレッドの前にテオという男性が現れる。先ほどの写真で窓側にすわっている人物。テオは言葉を話せず、過去の記憶もない。妻と二人暮らしだったが、交通事故で頭に障害を負い、家出をして徘徊するようになった。
事情を知らないフレッドは、テオを保護する。宗教的な意味合いもあるけれど、本音はフレッドが孤独を抱えていたからだろう。テオは自由人なので、気ままに行動する。フレッドはそんなテオに我慢ならないが、やがて二人のあいだに奇妙な友情が芽生えるという物語。
フレッドはテオを通じて、自分をがんじがらめにしていた社会のしがらみから抜け出そうとする。何かを決めつけることは、それ以外のものを排除することにつながる。この街は古い考えの人間ばかりで、フレッドもそれに毒されていた。
ひとり息子は性同一性障害だった。そのことを受け入れられなかったフレッドは、息子を追い出していた。だけどテオと暮らすことで、息子のことを理解しようとする。
なぜフレッドは息子と確執があったのか? 実はフレッドもゲイだったから。それを隠して生きていた。自分のことを受け入れられないから、息子のことも認めようとしなかった。ラストでそれらの不要なものが、すべて消え去ってしまう。
天使の歌声を持つ歌手となっていた息子のステージで、フレッドは息子の名前を叫ぶ。コメディ映画のはずなのに、ボクはそのシーンで大泣きした。そして最高に美しいラストシーンが待っている。この映画の原題であるMATTERHORNの意味がわかるシーン。
LGBTを扱ったコメディなんだけれど、心が清水で洗われるような気持ちになる作品。孤独の辛さを知っているからこそ、ようやくわかる愛があるということだろう。とてもいい映画だった。
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