SOLA TODAY Vol.596
音楽、映画、そして小説等の娯楽に関して、時代に則して変化をとげている最先端は音楽分野だと思う。
まだ紙の本が主流だった時代に、CDを買う人が減り、音楽はネットでダウンロードするようになった。そして電子書籍が注目され始めると、音楽はダウンロードからストリーミングの時代に突入していた。常に一歩先を行っている。
ということは今の音楽業界を見れば、書籍分野の未来がわかるかもしれない。では今、音楽業界はどこへ行こうとしているのか?
音楽業界はポスト・デジタルの時代 —— アーティストのブランド化支援する日本の動画メディアluteって?
この記事でいきなり登場するのが、アメリカのミュージシャンたちの収入ランキング。昔とちがってコンテンツの売上と連動していない。ニューアルバムを出したからといって、上位に食い込むことはできない。
ランキングの上位を占めているミュージシャンの収入源は、ライブツアーによる興行収入とのこと。たいていはニューアルバムを出すと、少し遅れてワールドツアーに出る。だからアルバムを発表したときより、ツアーを行った年にアーティストは稼いでいる。
例えば2016年に収入1位だったテイラー・スウィフトは、その年に前作アルバムの『1989』のツアーを行ったから。ツアーをやっていない翌年の2017年には17位に落ちている。今年はニューアルバムのツアーが始まるから、きっとまたトップに躍り出るだろう。
もうひとつの大きな収入源は、アーティストのブランド事業。彼らのネームバリューを使うことで、ファッション等の分野に進出している。そういえばアリアナ・グランデのInstagramを見ていると、彼女のブランド商品の宣伝がアップされている。
もちろん売れる曲を作ることは大切。でないとツアーはできないし、ブランド商品だって売れない。だけど骨身を削って作った楽曲が、直接的な収入をもたらす時代ではなくなっている。CDを出したからメジャーデビューしたとは言えなくなった。
この記事はそんな音楽業界の現状を受けて、新しいプラットフォームを作ろうとしている事業が紹介されている。まぁそれは置いておいて、もしこの音楽業界の現状が書籍業界にやってきたら、作家たちはどうすればいいのか? そのことを本気で考えている。
すでに紙の本は売れなくなっている。一部のビジネス書はベストセラーを出しているが、ほとんどの書籍が一時期書店に並ぶだけで、やがて返品されて断裁されることになる(涙)
新しい試みとして、クラウドファンディングのキャンプファイヤーと出版社の幻冬舎が、『エクソダス』という会社を共同で設立している。出版する前に企画を募集して、それに賛同して出資する人を集める。つまり売る前に、コミュニティを作ってしまうというもの。
そうすることでそのコミュニティに参加してくれた人は本を買ってくれるし、自分たちが関わった本だからSNS等で拡散してくれるだろう。著者を中心としたコミュニティを先に作ることで、出版化していこうというもの。
これは先ほどの音楽業界の流れに合っているように思う。人を集めることはライブコンサートのようなものであり、コミュニティはブランド化につながる。こうした流れが、今後デフォルトになっていくかもしれない。
だけどそれはビジネス書だからできることだと、ボクは思う。うまく言えないけれど、小説とは合わないような気がして仕方ない。小説を書いていて思うけれど、作者の意識は常に揺れ動いている。書き進めることで、ようやく見えてくるものばかり。
あらかじめ『こういうものだ!』ということを、小説は明確に打ち出せない。完成して初めて、著者の心にあったモヤモヤが言語化されていることを発見できる。そこにいたる紆余曲折は、定量化できるものじゃない。
だったら、どうすればいいのか? その答えは、ボクにもわからない。確実に需要が落ちている小説という分野において、作者にできることは何なのだろうと常に自問している。
今、ボクに言えることはひとつだけ。よりよいコンテンツを作っていくしかない。物語という分野に関しては、それが大前提になると思う。売り方や宣伝方法が大切なのは重々わかっている。だけどページを繰る手を止められなくするコンテンツを作ることが、何よりも最優先じゃないかと確信している。
とにかく今日も前に進もう。登場人物たちを動かそう。それしかないと思う!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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