SOLA TODAY Vol.617
統計に基づいた結論は、認めざるを得ない説得力を持っている。反論しようと思っても、明確なデータに抗えない。
だけど統計学という学問があるのだから、統計処理というのは簡単なものじゃない。どのようなサンプルから取ったか、その後にどういった処理をしたか等で、出てくる結果が正反対になることがある。統計に関する興味深い記事を読んだ。
日本のがんの死亡率が上昇している、と言われることがある。この記事では、それが嘘だと明確に述べている。それは統計が示す事実を捻じ曲げているから。
『日本』とひとくくりにしても、様々な世代が混在している。だから単純にがん患者について統計を取っても、事実と異なる結果が出てしまうことがある。この記事で例示されているが、30代の1000人と、70代の1000人のがん発症率と死亡率を比べたら、その差は大きく開くのは当然。
だから統計学では、補正処理というのを行うらしい。詳しくはこの記事に書かれているので、興味のある方は見てほしい。年代によるちがいや、平均寿命のちがいを補正することで、初めて外国と比較できる。
そうして補正したデータで比較すると、むしろ日本ではがんの死亡率が減少している。がん患者が増えているのは事実だし、それが原因で亡くなる人は増えている。けれども医療の進歩により、がんによる死亡率は確実に減っている。
統計の数字が増えて出てしまうのは、日本が高齢化社会になっているから。平均寿命が世界でトップだから、高齢者が多い。だから必然的に、がんになる人の絶対数が増えているだけ。他国では別の病気で若いうちに亡くなる人が多いということだろう。
こうした統計のトリックを駆使することで、利益を得る人がいる。日本の医療はまったくなっていない。その証拠に死亡率が上昇しているではないか、と声高に叫ぶ人がいる。それは病院から患者を引き離し、高額の民間医療や食品を売りつけようとしている人たち。
がんで余命宣告をされたカメラマンが、ツイートで嘆かれていたことがある。善意であるのはわかるけれど、大勢の人が民間療法や食事療法を勧めてくるらしい。気弱になっているときだから、本人も家族も翻弄されてしまう。気持ちはうれしくても、はっきりいって暴力でしかないと書かれていた。
ということでこの記事の著者は、最後にこう述べている。
『「日本のがん死亡率は先進国の中で唯一上昇している」は嘘です。日本の高齢化に伴い、がん患者数は上昇しています。しかし、がんになった場合に亡くなる確率は確実に低下しています。日本のがんに対する早期発見・治療の技術は確実に発展しています。統計トリックに騙されないようにお気をつけください』
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