SOLA TODAY Vol.646
JR六甲道駅の近くにある高層マンションでは、道路に面した場所に飲食店等のテナントが軒を連ねている。理髪店や私設保育園もある。
駅に近いという立地の良さなのに、そこの飲食店がコロコロ変わる。早い店だと半年もしないうちに閉店して、次のお店が改装していることもある。ある飲食店のあとは、今では接骨院となるべく内装工事が進んでいる。要するに、それほど飲食店経営は難しいということ。
ボクが税理士事務所で働いていたとき、担当している顧問先に飲食店がいくつかあった。ちょうどバブルの真っ最中だったにも関わらず、利益を出すのに苦労されていた店が多い。他店と差別化できる圧倒的な特色がない限り、ライバル店との熾烈な争いに巻き込まれてしまうから。
ところがサラリーマンを定年まで勤め上げた人が、定年後に飲食店を経営することがよくある。なかには田舎暮らしにあこがれて、移住して店舗をかまえる人もいる。成功例もあるだろうが、ほとんどは悲惨なことになっているらしい。
この記事に出ているAさんは、都市近郊にある農産物の直売所を経営していた社長。かなりの利益をあげていたらしく、従業員も抱えていた。Aさんは50代になったとき、引退後の人生を考えたらしい。そこで思いついたのがパン屋。
わざわざパン教室まで通って、引退後は焼きたてのパンを出す店をやろうと決めたらしい。その後の詳しい経過は記事を読んでもらえばわかる。結果として多額の借金を抱えることになり、Aさんは自殺している。
どんな人でも食べることは必要だから、飲食店の需要が消えることはない。だけど逆にいえば、それだけライバルが多いということ。パン教室に通った程度のレベルで長期間パンを焼き続けてきた人と勝負するわけだから、苦戦することは目に見えている。
飲食店には設備投資という多額の初期費用がかかる。そのうえコンサルタントの専門家でさえ頭を抱えて悩むほど、店舗の立地や商品の傾向、並びに価格を決定するのは難しい。その土地に合わないものでスタートさせてしまうと、あっという間に赤字まみれになってしまう。
趣味レベルでそば打ちをしていたとか、ケーキを焼いていたなんて、プロの目からすれば失笑するしかない。安易に自分の老後を夢見て、それまで築き上げてきたものを失う人は相当いるらしい。成功例しか紹介されないから、目に止まらないだけなのだろう。
ボクがイチオシのパン屋さんに昨日立ち寄った。午前8時にオープンするんだけれど、店に到着したのは午前9時半。その時点で、ほとんどのパンが売り切れていた。平日なら買える時間だけれど、日曜日はわざわざ自動車で駆けつける人ばかり。だからあっという間に売れてしまう。
ここまでのパンを焼けるなら、放っておいてもお客さんは来るだろう。でもそこに至るまで、その店のご主人がどれほど試行錯誤されてきたかを想像すると、気が遠くなる。そんなに簡単なことじゃなかったと思う。そこまで突き抜ける覚悟がないと、飲食店経営は失敗するということだろうね。
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