女性たちの命をかけた決断
今日も梅雨の晴れ間で、神戸は最高の天気。窓を開けていると乾燥した風が吹き込んで、快適に過ごすことができる。
こんな日は仕事がはかどるので、予定どおり新作小説1回目の推敲を終えることができた。矛盾する部分や分かりづらい箇所を書き直したので、これで小説らしくなったと思う。2回目からはさらに奥深く切り込んでいくつもり。この調子なら、予定している4回の推敲は完了できそう。
推敲しているのはミステリー作品なんだけれど、次回作はホラーにする予定。それですでに頭のなかはホラー色になっていて、かなりヤバいwww
普通のことでもホラーの視点から見てしまう。だから夢もついホラーになりやすい。そんなときにこんな小説を読んだものだから、さらに脳みそがホラー色に染まっている。
『ビッグ・ドライバー』スティーブン・キング著という小説。
以前に『1922』という著者の小説を紹介したけれど、実はこの作品を含めて『FULL DARK.NO STARS』というタイトルで出版されている。『1922』には2つの物語が収められていて、この『ビッグ・ドライバー』にも2つの物語が収録されている。
本来は4つの中編をまとめた単行本だったけれど、日本で文庫化されるにあたって2冊に分けられている。その本来のタイトルにあるように、この4つとも真っ黒で、希望の星は見えない。『1922』なんて思い出すのも怖いほどの作品だったからね。
この文庫本に収録されている『ビック・ドライバー』と『素晴らしき結婚生活』もかなり怖い。ただ『1922』に比べると、まだ気持ちがスッキリする。なぜなら主人公の行動にカタルシスを覚えるから。どちらも女性が主人公で、命をかけた重大な決断をする。
『ビッグ・ドライバー』の主人公は女性作家。ある場所に講演会で呼ばれるが、その帰途にレイプされる。犯人は主人公を殺したつもりだったけれど、かろうじて生きていた。そしてそこに複数の女性の白骨化した遺体があるのを見つける。
警察に通報することも考えたけれど、彼女が選んだのは自ら犯人を殺すこと。そこに至るまでの心の葛藤が絶妙で説得力もある。それゆえ彼女を応援したくなる。最終的には思いを遂げて終わる。
『素晴らしき結婚生活』は中年の女性が主人公。結婚して27年になる。夫は優しい平凡な人間だと思っていたけれど、あることから殺人鬼だったことを知る。なんと11人もの女性を殺していた。
自分が秘密を知ったことが夫にバレてしまう。だけど夫は妻を愛していた。それゆえ妻を殺そうとせずに、2度とやらないから黙認してもらうようにすがる。夫に恐怖を感じた妻は表向きは受け入れる。だけどチャンスを待っていただけ。
麻薬中毒者と同じで、また殺人に手を染めることはわかっている。だけど警察に通報すれば、成人した二人の子供の人生が破滅することになる。そこで事故として夫を殺すチャンスを待ち、その思いを遂げるという物語。
どちらも恐ろしい物語だけれど、二人の女性の主人公に共感してしまう。『1922』とちがって後味の悪さが残らないのがよかった。読み進めていると、やるしかないという気持ちになるからだろう。人間の感情を揺さぶるということにおいて、とても勉強になった作品だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。