心の声が爆発する爽快感
関東は観測史上最速の梅雨明けらしい。近畿はまだ前線の影響を受けていて、雲は多く、ときおり激しい雨が降る。雨雲レーダーを見ていると、このブログを書き始めた午後4時半から30分以内には大雨が降りそうな気配。
今度晴天になれば、きっと近畿も梅雨明けが発表されるだろう。今年は完全に季節の動きが早い。桜だって異常に早く咲いて散った。どうも実際の季節と暦がズレているような気がする。もしかしたら9月の初旬には秋を感じるかも。
さて、頭のなかは次のホラー作品について考えているので、かなりサイコパスな状況になっている。つい恐ろしい想像をしていたり、凶悪犯罪のニュースに目が留まったりする。そんなときは切り替えが大切。
ということで、バカ笑いできる映画を観た。
『ふたりの男とひとりの女』(原題:Me, Myself & Irene)という2000年のアメリカ映画。写真のジム・キャリーとレネー・ゼルウィガーーが主演している。
警察官のチャーリーは、お人好しの優しい男。妻が浮気して黒人の子供を産んでも、自分の子供として愛情を注いでいる。妻が愛人と消えても、ひとりで父親としての責任を果たしている。
街では笑い者にされていて、誰もチャーリーの言うことに従わない。子供にまでバカにされていた。そんなチャーリーはストレスが積み重なることで、解離性同一性障害を発症する。いわゆる多重人格。
現れたのはハンクという乱暴者。まるでチャーリーの受けた仕打ちを復讐するかのように暴れまくる。ある日、ひき逃げ容器で逮捕されたアイリーンという女性を、ニューヨーク州警察まで護送することになる。病気の療養も兼ねていた。
ところがアイリーンの罪は冤罪で、ある組織の秘密を知ったことで命を狙われていた。警官までがアイリーンの命を狙おうとするなか、チャーリーとハンクという二つの人格が大活躍して、アイリーンを守ろうとするドタバばたコメディ。
ジム・キャリーらしいコメディ作品で、めちゃめちゃ笑った。正反対の人格をデフォルメして演技させたら、彼の右に出る俳優さんはいないだろうね。アイリーンを演じたレネーも若くてめちゃキュートだった。
ハンクが暴走すると、なぜがスッキリする。抑圧された心の声が爆発するからだろう。どんな人だってストレスを抱えている。仕事をしていたら、言いたいことを言えないなんて日常だろう。
そんな誰もが抱えているストレスを、映画の登場人物を使うことでぶちまけさせている。差別用語は連発するし、下品なことこのうえない。子供には見せられない映画だろうw
でもボクは、あえて意図的に差別を持ち出しているように感じた。差別というのは人間の心の奥に潜んでいる。普段は自制心によって言葉にしなくても、心の奥で差別をしていることはあるだろう。だけどハンクは、そんなもの気にもしない。そのまま口に出してしまう。
これは勇気ある演出だと思う。ひとつ間違えば、下品な差別映画になってしまう。だけどハンクというキャラを使うことで、差別がどれだけ人の心を傷つけて苦しめるものか、映像を通じて人々に訴えている。チャーリーが正気を取り戻してハンクの言動や行動を知ったとき、半端なく落ち込むからね。
この映画は笑いを誘いながら、そういうデリケートな部分について真摯な姿勢で向き合っていたように思う。だから見終わっても、不快な気分になることなく、チャーリーとアイリーンの幸せを祝福できる気持ちになれる。なかなか奥の深い、上質なコメディ映画だったと思う。
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