少女の嫉妬はかなり怖い
秋雨前線が南下しつつあるので、今日の神戸はかなり涼しい。湿度は高いけれど、最高気温は30度に届かないだろう。しばらくは熱帯夜から解放されそうなので、かなりうれしい。
まだ残暑の日もあるだろうけれど、いよいよ夏も終盤。今日の16日は五山の送り火なので、京都は大勢の人で賑わうだろう。
3日連続で現れた謎の尼さん幽霊も、その後は音沙汰がない。きっと今夜には、あの世に帰るのかもね。もしかしたらご先祖かもしれないので、気持ちだけでも送ってあげようと思っている。
8月も後半に入って、新作小説の執筆はエンジンをフル回転している。今日だけでも8000字くらいは書いた。9月の声を聞くまでには、ある程度見通しを立てられるようにしたい。だからこのタイミングで涼しいのはかなりありがたい。とにかく一歩でも前に進むしかない。
涼しいと映画も集中して観ることができる。今日も素敵な映画に出会うことができた。
『つぐない』(原題: Atonement)という2007年のイギリス映画。タイトルからして陰気な恋愛映画かと思っていた。たしかに恋愛映画だったけれど、予想をはるかに超える名作だった。
見終わったあとに調べみると、数えきれないほどの賞を受賞している。単にボクが無知なだけだった、ということらしいw
映画の始まりは1935年のイギリス。そう4年後にはヒトラーがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まるという時代。恋愛関係になる二人は、官僚の娘であるセシーリアと、使用人の息子であるロビー。
普通なら結婚なんて考えられない二人だけれど、セシーリアの父親は理解があり、才能のあるロビーを大学に行かせた。二人はケンブリッジ大学の同級生で、互いに愛し合っていた。ロビーは医者になるべく勉学に励んでいた。
ところがセシーリアにはブライオニーという13歳の妹がいる。作家を夢見ている多感な少女で、彼女もロビーを好いていた。ある日、セシーリアとロビーの関係を知った彼女はパニックになる。また間の悪いことに、二人の情事の場面に出くわしてしまう。
またまた間の悪いことに、屋敷にきていたローラという少女が敷地内でレイプされるという事件が起きる。ブライオニーはその犯人を目撃していた。本当は誰だが知っていたのに、彼女はロビーの名を口にしてしまう。嫉妬ゆえの行動だった。
少女の証言ほど効果的なものはない。嘘をつくとは思われない。結局ロビーは冤罪で刑務所に入れられてしまう。そして戦争が始まり、ロビーは減刑と引き換えにフランスの最前線へ送られてしまう。
ブライオニーはやがて自分がしでかしたことの大きさに心を痛める。償いの気持ちからか、大学に行くのを取りやめ、看護師として戦地から戻る負傷兵の看護をしていた。だけど姉のセシーリアは許してくれない。
真実を話して法廷に立とうとしても、レイプされたローラは大金持ちの犯人と結婚していた。つまりわかっていても、夫を真犯人だと認めるわけがない。ロビーの汚名は永遠に注がれることがないという状況だった。これはひどいよね。
ブライオニーの『つぐない』がどうなるのか? 気になる人は映画をどうぞ。悲劇なんだけれど、ブライオニーが背負った十字架の重さが、映画を観ている人に語りかけてくるはず。
セシーリアを演じたキーラ・ナイトレイ。ロビーを演じたジェームズ・マカヴォイ。そして13歳のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンの演技に魅了された。イギリス映画の本領発揮という素晴らしさだった。
さらに映像がどのシーンもとにかく美しい。それだけに戦争のシーンは残酷で心に重くのしかかってくる。ブライオニーのやったことはひどいけれど、あの感情は誰にでもあると思う。つぐないたいのに、つぐなえない。これほど苦しいことはないと思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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