マイノリティーの悲劇
台風24号が近づいている。まだ神戸は秋雨前線の雨なので、今のところ少し風が強い程度かな。でも明日の午後にはJRが運転を取りやめるそうなので、おそらくとんでもない天気になるだろう。
幸い雨と風に関しては安心な場所なので、それほど心配していない。もうすでにバルコニーは何もないので、台風対策は万全と言っていい。ただ明日になって困るのは停電かな。台風21号でもボクが住んでいる場所は停電しなかったけれど、明日はちょっと困る。
新作小説の原稿を送らなくてはいけないので、停電等でネットが使えないと大変。そのことが頭にあったので、今日は午前も午後も必死で仕事をしていた。でも明日の午前中くらいにまでかかりそうなので、停電だけが気になっている。
近畿は午後が荒天になるそうなので、なんとか午前中に仕事を済ませて、原稿を送ってしまえたらと思っている。そして午後から台風の通過を見守るしかないな。停電しなかったら録りだめしている映画でも観るか。
今日もそんな映画のひとつを観た。本当は仕事をしたいけれど、一度頭を休めないととかえって悲惨なことになるからねw
『アナザー・カントリー』という1984年のイギリス映画。元々は舞台の作品だったらしく、その舞台に出た二人が、そのまま映画にも出演している。その一人であるコリン・ファースは、この作品が映画デビュー作らしい。
写真の右がそうだけれど、めちゃ若いよね。でもコリン・ファースだってわかる。やはり名優は、若いころから名優だと感じた。存在感があったなぁ。
主人公はガイ・ベネットという名で、実在のスパイだったガイ・パージェスという人物がモデルになっている。このガイを演じているのはルパート・エヴェレットで、ボクは「恋に落ちたシェイクスピア』という作品の彼を記憶している。いい俳優さんだよね。
そしてガイの友人であるトミーをコリン・ファースが演じている。映画はガイが年老いて、亡命先のソ連でインタビューに答えるシーンで始まる。スパイ容疑でソ連に逃げるしかなかったのだろう。ところが彼は、もともと共産主義者ではなかった。
彼がイギリスの全寮制の学生だった1930年代は、今のようにLGBTが市民権を得ていない。ゲイだった彼はそのことを隠していた。なぜならゲイだとわかれば退学処分を受ける。この映画の冒頭でも、ゲイがバレた学生が自殺するシーンがある。
共産主義者だったのは友人のトミーだった。二人はあることに巻き込まれ、ゲイと共産主義というマイノリティーの悲劇に見舞われる。ラストシーン近くで、ゲイも共産主義も同じだと、二人が嘆くシーンがある。
この映画では語られていないけれど、ガイがなぜ共産主義のスパイとなったのか、そのセリフから想像できる。全体主義が吹き荒れていた時代、その圧力から逃れるようにしてソ連に亡命したんだろう。本音をいうと、このあたりを映画でも触れて欲しかった。
理想的な国家なはずのソ連が、民衆を恐怖で弾圧している。そのことを知ったガイがどう思ったのか、想像するだけで泣けてくる。地味な映画だけれど、マイノリティーの悲劇が切なく伝わってくる作品だった。ソ連が崩壊したのを知っている現代人のほうが、余計に切なさが増す作品かもしれない。
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