SOLA TODAY Vol.741
物に記憶が残されていて、それを取り出せればいいなぁ、といつも思う。
人間は嘘をつく生き物。だから古代から語りつがれていることも、書き残された文章も、事実に加えて思い込みや妄想、あるいは意図的な改ざんが含まれている。
だけど物には利害関係も感情もないから、事実をありのままに記憶しているはず。そんなことを感じる出来事があった。
スウェーデンで1500年前の剣が見つかった。比較的保存状態もいいらしい。こんな雰囲気。
発見したのは8歳の少女で、夏休みの家族旅行中に湖で泳いでいた。普段は水の多い湖らしいけれど、ちょうど干ばつで水量が異常に減っていたらしい。足に何かが触れたのを感じた少女がたしかめると、この剣が出てきたとのこと。
これがアーサー王伝説だったら、この少女は未来の女王として認められたようなもの。ヨーロッパの人にとって、それほど神秘的な出来事だったろうと思う。調査してみると、1500年前のヴァイキング時代の剣だったとのこと。
もしこの剣に記憶があるとしたら、その当時の様子を教えてもらえるのにね。あくまでも剣なので、血なまぐさい出来事がほとんどだろう。誰かを刺し殺しているのはまちがいない。
だとしてもこの剣を作った人、所有していた人、そしてその周囲の人たちの生活が、ありのままに聞き出せる。もし物の記憶を取り出すことができるなら、歴史ファンにとってたまらないことだと思う。
先日あるテレビ番組で、一休和尚が彫った仏像や、利休が作った箱が紹介されていた。もしそれが本物で、かつその物の記憶が取り出せたらすごいよね。その仏像は一休さんの顔を見ていたわけだし、その箱は自分に触れる利休の体温を感じていただろう。
物から記憶が取り出すことができれば、おそらく歴史の教科書の多くが書き直されることになると思う。武将や貴族の言葉として伝えられてきたセリフが、まったく正反対のものだったということが出てくるはず。きっと大混乱になるだろうねwww
そんなこと現実では難しいけれど、物語なら可能。ということで物の記憶について、次の小説に取り入れてみようと思う。そういえば物語は「物を語る」だけでなく、「物が語る」とも言えるよね。今になって気がついた。
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