変人であることに磨きをかける
かなり気味の悪い幼稚園がある。買い物途中に通りかかると、いつも寒気がし真夏でも鳥肌が立つ。幽霊が出るわけじゃないよ。
その幼稚園では園庭に子供を集めて、押し付けの人生訓を暗唱させている。幼児に意味がわかるとは思えない内容なのに、無理やり暗記させられて大声で一斉に言葉を吐き出させている。
頭に浮かぶのは兵士たちの姿で、幼稚園の教師が将校に見える。そもそも戦後の日本の学校教育というのは、兵隊を生み出す方法が継承されている。新学期になったら体育で最初にやるのは、ボクの時代には意味のない行進や整列の練習だった。
その悪弊は今の小学校にも残っているように思う。皆と同じことが正しいとされ、そこからはみ出す子供はオミットされてしまう。おそらくこの幼稚園の経営者は、そんな昔の教育に毒されたままで子供に接しているのだろう。親はよくあんな幼稚園に子供を預けるなぁと心配になる。ボクに子供がいたら、絶対に嫌だ。
高度経済成長時代はそれでもよかった。誰もが一丸となって会社のために働く。会社の歯車だと感じていても、それなりに達成感があった。だけど今の時代はちがう。昭和時代に育ったボクでも、その発想が古臭いことを強烈に感じている。
画一的なものを押し付けようとすることに違和感を感じない親たちや、そんな社会にストレスを感じている若い世代はこの本を読むといい。そうすれば目がさめるだろうし、これから社会に出る人はモチベーションが高まると思う。
『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』尾原和啓 著という本。
読書慣れしている人なら、すぐに読める本だと思う。ボクも2時間で読了してしまった。だけど中身は濃いよ。
新しい本なのでこれから読む人のためにさわりだけ紹介しよう。
人間の欲望というのは、『達成、快楽、意味合い、良好な人間関係、没頭』に大別できるそう。戦争によって何もかもが失われた世代は、最初の2つを強烈に求めた。
高度経済成長時代は、物が満たされていない時代だった。だから力を合わせて目標を達成して、いい車を買ったりして快楽を得ることがメインだった。ボクなんかもその世代に属するだろう。著者は「乾いた世代」と呼んでいる。
ところが今の30代以下の人は、生まれたときからすべてがそろっている。だから何かを達成して快楽を得るより、自分の仕事の意味合いや人間関係、さらに没頭できることに主眼を置く。著者は『乾けない世代』と呼んでいる。
今の時代はこの両者の感覚のちがいが、断絶を生んでいる状態。それゆえ老害という言葉が出てきたり、パワハラのようなことが起きる。互いの価値観を理解できないから摩擦が生じる。
でもこれからの時代は『乾けない世代』が中心となってくる。それゆえ、働き方も変わってくる。その理想的な状況を著者がわかりやすく書いてくれているが、ボクは心から同意した。今のボクの感覚は、『乾けない世代』に近いものがある。
人によって得意分野がちがう。だから他人と同じである必要なはない。むしろ他者とちがう変人部分に磨きをかけることが、この先の社会を生きていく武器になる。自分のできないことは他人がやってくれる代わりに、他人ができないことを自分がやればいい。
気味の悪い幼稚園のように、同じ言葉を一緒になって唱える必要なんてない。画一的な教育や社会の同僚圧力に疑問を感じている人は、ぜひこの本を読むといい。感じている違和感がまともだとわかるだろう。シンプルだけど、とてもいい本だった。
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