SOLA TODAY Vol.777
新しいアイデアを思いつくなんて、たいしたことじゃない。まれに見るような大天才でもない限り、自分が思いつくようなアイデアなんて、他の誰かも当然のように考えている。
大切なのは、そのアイデアを『形』にすること。それは科学的な発見でも、技術的な発明でも、そして小説でも同じ。『形』にできなければ、どれだけすごいアイデアを思いついても意味がない。
なぜNHK「まんぷく」は、安藤百福の“台湾ルーツ”を隠したのか
チキンラーメンやカップヌードルを開発した、日清食品創業者の安藤百福さん。今はNHKの『まんぷく』というドラマで、彼の人生が語られている。
視聴率は好調らしく、ボクも録画してずっと見ている。実在の人物をモデルにしているし、チキンラーメンという馴染みの商品も登場するので、いつも楽しみにしている。これからさらに面白くなっていくだろう。
その『まんぷく』について触れた記事だけれど、どうも居心地の悪さを感じる内容だった。記事の著者によると、安藤百福さんが台湾出身であることをNHKは隠そうとしている。いや、元々は安藤さん自身が触れられたくないと思っていたので、NHKが忖度したのではという記事だった。
チキンラーメンのアイデアの元は中国にあるらしい。麺を油で揚げて保存食とするのは、中国で行われていたものだそう。台湾出身の安藤さんだからこそ、チキンラーメンを発明することができた。それなのに台湾出身であることに触れないのは、違和感を覚えるという記事だった。
でもボクはそう思わない。たしかにチキンラーメン発想の原点は、中国の食文化かもしれない。
だけど中国や台湾で、チキンラーメンが発明されただろうか?
アイデアがあったとしても、それを具体的な『形』にしたのは、安藤さんの功績だと思う。それは台湾人であるとか、日本人であるとか関係ない。頭に浮かんだアイデアを具体的な『形』にしたことが素晴らしいんだと思う。
だからドラマでは、そんな安藤さんの実行力を描こうとしているはず。今は塩を作っているけれど、それだって彼の行動力があったからこそできている。普通は塩がなくて困っているなぁ、で終わってしまうからね。
アイデアを形にする安藤さんの魅力を抽出して、ドラマにしたのが『まんぷく』だと思う。だからあえて実名を使わず、立花萬平という役名になっている。これはフィクションですよ、とNHKは高らかに宣言しているのに、なぜ違和感を覚えるのかまったくわからない。
国籍なんかにこだわっていたら、世の中の小説や映画を楽しめないと思うんだけれどな。歴史の教科書じゃないんだからね。どれだけ風当たりが強くても、自分のアイデアを『形』にしようとする萬平さん。そしてそれを支える妻の福子。
それこそがこのドラマの醍醐味だと思う。この先どうなっていくのか、めちゃ楽しみにしている。
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