宇宙に命はあるのか
ボクは子供のころ、冬の布団にもぐりこむとある妄想を楽しんでいた。
それは一人乗りの宇宙船で宇宙を旅すること。戦闘機のようにほぼ操縦席しかない宇宙船だけれど、背後にミニチュア版になった牧場と農地が係留されている。人工太陽で野菜が栽培され、家畜も育つ。そしてボクが操縦席でボタンを押せば、それらの材料を使ったトンカツ定食等が出てくる。
冷静に考えたら孤独だし、今ならエコノミー症候群の心配をするだろう。だけど冬の寒い時期の妄想なので、狭い場所が理想的だと思ったんだろうね。そもそもボクは狭い場所が大好きなので、泊まったことはないけれどカプセルホテルなんか最適な環境だと思っている。
その当時から宇宙に興味があり、今でも星を見るのは大好き。そして遠い星のどこかに、きっとボクたちと同じ思いで宇宙を見つめている存在がいると確信していた。ボクはそこで終わったけれど、その想いを抱き続けている人たちが紹介された本を読んだ。
『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』小野雅裕 著という本。
小野さんは日本人ながら、アメリカのNASAのジェット推進研究所で働く現役の研究者。まだ若い方だけれど、東大の宇宙工学科を出たあと、マサチューセッツ工科大学に留学して博士号を取得しているという天才。現在は火星探査ロボットの開発をされている。
でもこの本は専門書ではなく、誰にでもわかるように書かれている。ボクのように宇宙に向けて妄想をした人たちのなかで、その夢を具現化していった人たちのことが紹介されている。
現在のロケットの基本になっている第二次世界大戦中のミサイル開発から、ボイジャー1号や2号という惑星探査まで、宇宙に未知の命を求める人たちの努力とその結晶が理解できる素晴らしい内容になっている。
ボクがもっとも興味深く読んだのは、ナチスの元でミサイルを開発したフォン・ブラウンという科学者。本当は宇宙にロケットを飛ばすことが夢だったけれど、ミサイルによる連合国への反撃をヒトラーに決意させて、ロケットの開発を進めた。ある意味、悪魔に魂を売ったような人でもある。
だけどナチスのやり方に嫌気がさし、最終的にはアメリカへ亡命している。そしてなんと月へ到達したNASAのアポロ計画でも中心人物となって活躍している。やはり宇宙への夢を捨てられなかったんだろうね。
宇宙に命があるのは確実だと思われている。ただ、それがどこにあるのかわからないだけ。タイトルにある一千億分の八というのは、探査できる惑星のうち人類はまだ八つしか関わっていないということ。それでもとてつもない大勢の人の知能と努力が注ぎ込まれている。
スピリチュアル系の本で宇宙人のメッセージを読むよりも、こうした現実の研究成果を通じて宇宙に思いを馳せるほうが楽しいと思うよ。ボクはこの本を読んで、子供のころの妄想がもう一度キラキラと輝き始めたような気がする。
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