君の膵臓をたべたい
小説を書いていると、いつも頭を悩ませるのがタイトル。書き始めるとイメージを継続させるため、必ず仮タイトルをつけている。
インスピレーションが来て、これしかないというタイトルの場合もある。今月いっぱいの期限で無料で公開している『エリクサー』は、仮タイトルの段階から一度も変更しなかった。
ところが現在ある文芸賞の選考に残っている『いつか生まれた日に』という小説は、これで3度目のタイトルになる。今ではこれ以上のタイトルはないと自負しているけれど、ここに至るまで悩みに悩んだタイトルだった。
なぜならタイトルは、まさに小説の顔だから。人間の出会いでも美男美女が有利なように、少しでも興味を持ってもらうためにタイトルは重要になってくる。そんな小説のタイトルで、ずっと気になっていた作品がある。
『君の膵臓をたべたい』という住野よるさんの小説。本屋大賞にノミネートされたとき、このタイトルのインパクトに圧倒された。だって気味が悪いもの。
最初に頭に浮かんだのは、『羊たちの沈黙の』のハンニバルことレクター。とことがそんなホラー作品とちがって、青春小説とのこと。そのギャップがずっと気になっていたんだけれど、いまだにその小説を読んでいない。
ところが少し前、この作品の映画化がテレビで放送されていた。それで録画しておいたけれど、ようやく観ることができた。
『君の膵臓をたべたい』という2017年の日本映画。
いやいや想像していたのとちがって、実にさわやかで素敵な物語だった。生と死についてよく練られた、素晴らしいストーリーだと思う。高校生のころのボクが映画の進行にともなって引っ張り出されてきたので、なんとも言えない切なさで胸がいっぱいになった。
そしてわかっちゃいるけれど泣いたよ。物語のテーマは理解できるし、だからこそ結末も想像できる。それでも涙があふれてきた。
ただ、どうしても納得できないことがある。
主人公の二人が会話しているとき、通り魔事件のことが出てきた。伏線なのはわかるけれど、まともに使ったらダメだよ、と願い続けながら見ていた。でもそのボクの願いは虚しく、咲良は通り魔に殺されてしまう。
家族以外で彼女の病気を知っているのは、主人公の春樹だけ。親友でさえ知らない。そして物語の展開として、彼女がそのまま病死するのはまずいと思う。だけど通り魔は絶対にダメ。伏線が張ってあっても、使っちゃいけないと思う。
ボクはこの部分で、感動が一気に半減してしまった。あまりに不自然すぎる。交通事故でええやん。通り魔を使ったことが、最後の最後までボクの心に引っかかってしまった。なんだか残念だったなぁ。
原作を読もうかと思ったけれど、きっと小説も同じなんだろうなぁ。そう思うと、原作を手に取る気持ちが萎えている。う〜ん、ホラー作品じゃないんだから、通り魔事件はやめてほしかった。
ピクシブ文芸大賞の最終選考に残った『エリクサー』を、2018年12月末までの期間限定で無料公開しています。こちらからどうぞ。
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