奇跡を起こしたサヴァン症候群の少年
小説やアニメの世界において、二次創作物というのが問題になることがある。コミケこと、コミックマーケットでは、二次創作物の作品が制作され、販売されていることが多い。
これは著作権の問題もあり、かなり慎重に扱う必要がある。著作権者や版権者の了承を得ているのならまだしも、勝手に二次創作を行なって販売するのはマズいだろう。場合によっては元の作品のイメージを改悪することになりかねない。
だけど二次創作物が悪いわけじゃない。優れた作品もあるはず。
昨晩、そんな二次創作物の小説を読了した。まさにそれは最高の二次創作で、もしかしたら元の作品を凌駕するかもしれない。
『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』下巻 ダヴィド・ラーゲルクランツ著という小説。
この作品はスティーグ・ラーソンという著者が書いた、『ミレニアム』シリーズ三部作の二次創作物であり続編。『ミレニアム』は世界的なベストセラーになった作品だけれど、著者はその素敵な知らせを知ることなく他界してしまった。だからその三部作で終わりだと、ボクも含めたファンの誰もが悲しんでいた。
そのあたりの経過については、この作品の上巻について書いた『ヘコんだ時に元気になる物語』という記事に触れているので、おおよそのことをわかってもらえると思う。
主人公はリスベットという名の女性ハッカーと、雑誌『ミレニアム』の代表であるミカエルという男性記者。上巻では、ある組織の秘密を握ったフランスという学者が殺害された。その犯人を目撃したのがアウグストというフランスの息子。だが彼は強度の自閉症で、言葉を話すこともできない。
ところがアウグストはサヴァン症候群でもあり、驚異の頭脳を有している。数学に関して天才的なものを持っているだけでなく、自分が見たものを克明に絵に描くことができる。それゆえ、彼は組織に狙われることになる。
めちゃめちゃ面白い小説なので、これ以上のネタバレはやめておこう。下巻はアウグストを危機から救い助け出したリスベットが、二人で逃亡する場面から始まる。そしてリスベットは、この陰謀に関わっているのが世界的なグローバル企業と、NSA(アメリカ国家安全保障局)の幹部の『誰か』だということをハッキングによって知る。
NSAといういのは、ある意味国家的なハッカー集団のようなもの。アメリカ国家に脅威をもたらすと判断すれば、他国の国家主席であろうとハッキングを行う。それゆえに情報は難攻不落の暗号で隠されていた。
その状況を打開したのはリスベットとミカエルだけど、アウグストという少年の存在なしには事件が解決することはなかった。その少年の天才的な頭脳によって、奇跡なようなことが起きる。とにかく興奮しっぱなしで、こんなにドキドキする小説を読んだのは久しぶり。
物語のラスト近くでは、リスベットとアウグストに深い友情と信頼が生まれる。誰にも心を開くことのなかったアウグストがリスベットに見せる態度に、ボクはマジで号泣してしまった。
だがこの物語の真の悪役はカミラという超、超、超美女の女性。その正体はリスベットの双子の妹。カミラの目的はリスベットに復讐すること。だからこの物語はまだ終わらない。カミラとリスベットの対決が、おそらく『ミレニアム5』で再開されることになるのだろう。これも読むよ!
とにかくこの二次創作物は、元の三部作を損なうどころか、さらに素晴らしい作品に進化している。小説好きの人は絶対、絶対に読んだほうがいい。だけどできることなら、『ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女』という最初の作品から読んでほしい。
そうすればこのシリーズの素晴らしさがわかると思う。さてさて、続きが気になるなぁ。
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