SOLA TODAY Vol.899
人間は追い込まれると、これまでになかった新しい活路を見出す。だからこそ種として生き延びてきたのだろう。
ここのところ世界に緊張をもたらしているベネズエラで、興味深いことが起きている。
現在のベネズエラは、いつ内戦が起きても不思議じゃない。物資や食料が枯渇していて、インフラもズタズタ。病院ではまともな治療や看護ができず、大勢の人が亡くなっている。
ちなみにベネズエラで何が起きているのか知らない人のために、ボクの復習も兼ねてふり返ってみよう。
大元の原因を作ったのは1999年に就任したチャベス大統領。彼は大衆に迎合して人気をあおるポピュリズムの政治家で、調子に乗ってとんでもないことをやらかした。
石油産出国として経済を潤していてた石油関連事業を、強制的に国有化してしまった。追い出されたのがアメリカの企業。それで得た富を国民に分配した。社会主義国家らしい政策だよね。低所得者向けのアパートや学校、病院まで作った。民衆にはいい大統領に見える。
でも石油施設は老朽化する。現在のマドゥーロ大統領政権になると、石油施設の維持が難しくなってきた。追い出したからアメリカの企業には協力してもらえない。原油価格が下がり、経済は一気に困窮。それでもポピュリズムを継承したマドゥーロ大統領は、バラマキ政策を続行して専制政治を進める。
その結果、ベネズエラ国家通貨が暴落して、なんと200万パーセントの物価上昇を招いた。いわゆるハイパーインフレというやつ。国家は破綻寸前。そこでグアイド国会議長が法律に基づいて、暫定大統領に就任することを宣言した。それを後押ししているのがアメリカ。
ところがマドゥーロ大統領も黙っていない。そんな宣言は無効だと主張した。彼の背後にはキューバとロシアがいる。ということで政府側と反政府側の対立が続き、内戦一歩手前までに至っている。それはある意味アメリカと、キューバ・ロシアの代理戦争のようになっている。
最初の話に戻ろう。そんなベネズエラで興味深いことが起きている。
ハイパーインフレのせいで、ベネズエラ通貨は紙切れ同然。だからドルしか使えない店が増えた。だけど政府側の立場にしてみれば、敵国同然のアメリカ通貨なんて使いたくない。そこで登場したのが仮想通貨。
仮想通貨で決済できる店舗が圧倒的に増えているらしい。まさに追い込まれることで、これまでになかったシステムが機能し始めている。ひと昔前なら、経済危機を切り抜ける際の通貨はドルだと決まっていた。でもいまの時代は仮想通貨の台頭によって、特定の国家が発行する通貨に頼る必要がなくなった。
この現象はある意味世相を反映していて、とても興味深い。『お金』というのは信用であって、それがアメリカの独占ではなくなってきたということだろう。世界の構図が変わる可能性を感じる記事だった。
ただベネズエラの状況はかなり深刻。貧困層の人たちに仮想通貨なんて使える余裕はないだろう。飢えて死ぬかもしれないような状況だから、家族を守るためなら命をかける人が出てくるはず。本格的な内戦に至らないことを祈るしかない。
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