銃規制を勝ち取ったトレードオフ
一週間前に起きたニュージランドのテロでは、銃がもたらす恐怖をまざまざと見せつけられた。直後にオランダでも発砲事件が起きている。そしていつになっても終わりが見えそうにない銃乱射事件に翻弄されているアメリカ。この国には歴史的な背景があり、どうしても銃規制に歯止めがかかってしまう。
もちろんアメリカ人たちは、銃規制強化に向けて動いている。黙って指をくわえているわけじゃない。だけど資金力を有する銃社会の擁護者たちは、どのような手段を取ってでも銃を持つ権利を死守しようとしている。そんなアメリカの苦悩を描いた映画がある。
『女神の見えざる手』(原題:Miss Sloane)という2016年のアメリカ・フランス映画。初めて観た作品だけれど、この映画はマジでオススメ。2時間10分ほどの作品だけれど、とてつもないスピード感と牽引力を持っているので、まったく画面から目を離せない。
主人公はスローンという名の著名で有能なロビイスト。協力を請け負った組織を勝たせるため、鬼のように敵の先手を打って攻めまくる。その成果は素晴らしく、誰もが彼女を味方につけたいと思うほど。
でもプライベートは破綻していて、不眠症から薬物依存に陥り、普通の人にように恋をして家庭を持つ時間など持てないから、金で男性を買っている。天才ゆえ誰にも理解されず。強烈な孤独とともに生きている。
ある日、スローンの腕を見込んだ政治家が、彼女に仕事を依頼する。銃の推進派の議員で、女性票を取り込めるようにロビイ活動を請け負ってほしいとのこと。だけどスローンはその議員を罵倒するだけでなく、勤めていた会社を退職して銃規制強化を進める会社のヘッドハンティングを受ける。
そこから両者の対決が始まるんだけれど、スローンのすさまじい能力で勝利が目前になる。ところが相手も黙っていない。彼女の過去のミスを暴き出し、国会議員による公聴会を画策して彼女を刑務所へ送り込もうとする。
映画の終盤になって、もうスローンに勝ち目がないと誰もが思う。銃規制法案は却下され、彼女は刑務所送りになる展開しか見えない。ところが最後の最後で、彼女は爆弾を用意していた。その爆弾は公聴会を『激震』させる。
とんでもない大どんでん返しが待っているので、これ以上は内緒にしておこう。この映画を初めて観る人は、絶対に知らないほうがいいから。ブログのタイトルのように銃規制強化は勝ち取る。だけどそれは彼女が自分を犠牲にした、究極のトレードオフのおかげだった。とにかくビックリするし、めちゃ気持ちがよかった。
スローンを演じたジェシカ・チャステインは本当に素晴らしい女優さん。この映画は彼女の演技で成り立っていると思う。ボクはめちゃめちゃファンになってしまった。はちゃめちゃで性格破綻しているのに憎めないという難しい女性を、彼女は完璧に演じていたと思う。
本来ならアカデミー賞を受賞しても不思議じゃない。だけど銃規制の映画だけに、評価されにくいんだろうなぁ。こういう部分にもアメリカという国家が抱える闇があるような気がした。
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