非人道的な場所は怪物になる
明晰夢がどんな雰囲気なのか知りたい人のために、その世界を写し取ったようなミュージックビデオを紹介しよう。
Pinkのリリースされたばかりの新曲で『Walk Me Home』というタイトル。2日ほど前にビデオが公開されてすぐに見たけれど、これはまさに明晰夢の世界。そういう意図で作ったものじゃないだろうけれどねw
Pinkが街の雑踏を歩いていて、ふいに雰囲気が変わる。人が誰もいなくなってしまう。そして曲に合わせてダンスをするんだけれど、まるで重力を無視したかのように彼女の身体がふっと浮き上がったりする。この感覚が明晰夢のときと同じなんだよね。見てもらえば、ボクの言っている意味がわかると思う。
そして明晰夢よりも悪夢が好きな人は、こちらの小説をどうぞ。
『シャイニング』上巻 スティーブン・キング著という小説。
ホラー映画が苦手で避けていたけれど、少し前に勇気を出してようやく映画を観た。思ったより怖くなく、それ以上に気になることがいくつもあった。ホラー的な部分ばかり強調されていて、物語の背景がわからない。どうしてもそれを知りたくで、原作を読んでいる。
この物語は簡単に言うと、死霊に取り憑かれた夫が、妻と5歳の息子を殺そうとする物語。作家くずれの教師だったが、失業して困っていた。そこで冬季のあいだ閉鎖されるホテルの管理人として家族で暮らすことで、収入を得つつ、書きかけの作品を完成させようとする。
ところがこのホテルは『ワケあり物件』だった。5歳のダニーは他人の心を読み取れる能力を持っている、その能力がこの物語では『シャイニング』と呼ばれている。同時に霊感もあるので、このホテルに巣食っている幽霊も彼は見てしまう。
という物語なんだけれど、映画では『ワケあり物件』の『ワケ』があいまいだったので不満が残っていた。ところがさすが原作だよねぇ、上巻を読んだだけで、このホテルがどれほどヤバい物件なのか知ることができた。
所有者はコロコロ変わり、一時はマフィアのアジトになって殺し合いもあった。自殺者も多数出ている。そしていまのところわかっているのは、このホテルは人間の心に潜んでいる『狂気』を引き出す作用を持っているということ。
ダニーが悪夢で受け取る言葉がそれを象徴している。『非人道的な場所は、人間を怪物にする』という言葉。その怪物となる『狂気を』を心のうちに宿しているのは父親のジャック。これは映画と同じ。
だけど原作では、ジャックが怪物となるための要因が事細かに語られている。ようやくジャックの人物像がつかめてきた。映画だとジャック・ニコルソンの恐ろしい顔しか思い浮かばないからねw
ジャックはひどいアル中だった。泥酔したせいで、ダニーの腕の骨を折ってしまったこともある。ただある日、酒を飲んだ友人の車に乗っているとき、友人が子供の自転車をはねてしまう。遺体は見つかっていないし、事故の報告もない。でも恐ろしくなって、それ以来酒を絶った。
でもかんしゃく持ちであることに変わりなく、それが原因で教師をクビになっている。そんなジャックが少しずつ壊れていく。まだ酒は飲んでいないし、暴力もふるっていない。だけどこのホテルにいる限り、時間の問題なのは明らか。
そしてついに雪が降り出した。このホテルは完全に外界との接触が閉ざされる。家族3人だけのホテルで、この先は悪夢しか待っていない。今日から読む下巻が楽しみだけれど、ちょっと怖いなぁ。
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