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高羽そらさんインタビュー

SOLA TODAY Vol.906

罪悪感なんてまったくないと言い切れる人がいるとしたら、その多くは心を病んだ連続殺人鬼のような人物だろう。

 

どんな人にだって後悔することはあるはずだし、程度の差はあってもなんらかの罪悪感を持っていると思う。先日読んだ『キャリー』という小説で、スーという女子高生をつき動かしていたのは、キャリーをいじめたことに対する強烈な罪悪感だった。あの物語の場合は、その罪悪感が悲劇を呼び込んだんだけれどね。

 

誰かの心を傷つけたかもしれない、という罪悪感は人間を苦しめる。だけどそれ以上に恐ろしいのは、他人の命を奪ったということに対する罪悪感。それも私的な怒りにまかせて誰かを殺したのではなく、忠実に職務を遂行するうえでのことだったとしたら……。

 

ある人物のことを知って、彼が心に抱えていたであろう罪悪感を想像するだけで、ボクは打ちのめされそうな気持ちになった。

 

人間爆弾・桜花を発案した男の「あまりに過酷なその後の人生」

 

それは大東亜戦争の時代。戦闘機で敵艦に突っ込む特攻隊を知っている人は多いだろう。人間魚雷の『回天』という恐ろしい特攻兵器もある。そして海軍がもうひとつ開発した特攻兵器に『桜花』というものがあった。

 

これは人間ミサイル。飛行機に設置して敵艦に迫り、射程に近づいた段階で発射される。その中にはパイロットがいて、操縦することで相手を狙うという兵器。現代人が見れば正気の沙汰ではないけれど、当時は『狂気』が支配していた時代。軽率に非難することはできないと思う。

 

この『桜花』の原案を出したのが、太田正一という人物。少尉という下士官の立場なのに、彼の発案が海軍の幹部によって承認された。それほど日本は追い詰められていたのだろう。

 

結果として完全な失敗に終わる。発射された段階でアメリカ軍のレーダーに捉えられて、ほとんどが撃ち落とされている。兵士たちは犬死にでしかなかった。

 

この責任を誰に問うのかは難しい。普通の流れで言えば、この攻撃を決めた将校たちだろう。太田正一は原案を出したに過ぎない。だけど彼は戦闘機の搭乗員たちに恨まれていた。そういうこともあってか、終戦の3日後に零戦で空に飛んだ太田は消息を絶っている。墜落事故死として認定され、戸籍も抹消された。

 

ところが彼は生きていた。くわしくはこの記事を読んでもらえばと思う。戸籍のないまま名前を変え、想像を絶する罪悪感を抱えたままで生きていたらしい。彼の息子とその妻によって、そのことが証言されている。

 

1994年、息子夫婦と同居していた太田が失踪した。行き先は『桜花』が使用された沖縄。そしてその後、海軍の慰霊碑がある高野山に向かった。ある塔頭の僧侶に横山という偽名ではなく本名を明かし、自分の過去を告白したそう。そしてその行為をひどく後悔していたらしい。

 

翌日高野山を出た太田は、白浜の三段壁で自殺しようとしてパトロール中の警察官に保護される。息子さんが迎えに駆けつけたとき、父親はせきをきったように大泣きしたそう。父親のそんな姿を初めて見た、と息子さんは語っている。

 

その後体調を崩し、医師の診察を受けると余命3ヶ月と宣告された。自分の死期を悟り、命を断つことで贖罪しようと思ったのかもしれないね。50年近くも抱えていた彼の罪悪感の重さを想像すると言葉にならない。温和な人だったらしいけれど、その苦悩をずっと隠していたんだろうね。

 

無駄に亡くなった人のことを思うと、彼を擁護する気持ちは起きない。だけど彼も戦争の犠牲者であることはまちがいない。人を狂わせてしまうのが、戦争の本質だと思う。長い記事だったけけれど、心に深く突き刺ささる内容だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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