著名人家族の辛さを感じた
自分のことを変人だなぁ、と思うことが多い。そのひとつに、手に触れることのできるボクの写真が1枚もないというものがある。
そもそも小学校の低学年以前の写真がなかった。自分が赤ちゃんだったという証明がないwww
小学校1年生のときに生母が家出をしたことで、おそらく大人たちが当時の写真を処分したんだろうと思う。だから写真によって過去をさかのぼるという習慣がないので、もともと執着心が存在していない。
それでもそれ以降の写真はあった。卒業アルバムもずっと置いてあった。だけど引越しや大掃除を経験するたび、それらの写真を特に見返していない自分に気がついた。置いておかなければ、となんとなく思っていただけ。それですべての物理的写真を思い切って処分した。
妻もその気持ちを共有してくれているので、我が家にはアルバムというものが存在しない。写真はデジタル化されてパソコンのハードディスクやクラウド上に残されているものだけ。この世とおさらばするときが来たら、ほんの数分であとかたもなく処分することができる。
別にそれが寂しいとも悲しいとも思わない。思い出は心のなかに残っているし、自分が死んだときにアルバムをあの世に持っていけるわけじゃない。持っていくのはやはり思い出だけ。だからあえて写真を残していない。
だけど著名人の家族がそうしようと思っても、なかなか難しいよね。ある映画を観ていて、そんなことを痛切に思った。
『ハンター』(原題:The Hunter)という1980年のアメリカ映画。好きな俳優を聞かれて、ボクが絶対あげるのがスティーブ・マックイーン。50歳という若さで亡くなってしまった彼の遺作となった映画。この映画が公開された年の11月に他界している。
保釈中に失踪した逃亡者を発見して、保釈金を貸した人から賞金を稼ぐ人物が主人公。実在の人物であるラルフ・ソーソンをスティーブ・マックイーンが演じている。
アクション映画なんだけれど、どこかコミカルでとても楽しい作品。かなり笑える。『栄光のル・マン』というレース映画に出演したほどの彼が、この映画では運転が下手なキャラだというだけで笑えてしまう。縦列駐車するだけで、四苦八苦して車をぶつけまくっている。
そんな頼りなそうな主人公だけれど、仕事は一流。どんな凶悪犯でも見事に見つけ出して連れてくる。ストーリー的にはもう少し伏線を張って回収して欲しかったけれど、彼のファンなら十分に楽しめる作品だと思う。
この映画を観ながらも、このすぐあとに彼が亡くなると思うと無性に切なかった。ただのファンでさえそう思うのに、彼の家族や親しい友人だったら、この映画が観るのは相当辛いだろうと思う。著名人は映像が残っているからキツいよね。
家族にとっては自分の父であったり息子であった人が、生きていたときと同じようにスクリーンの向こうで笑っている。ぼんやりテレビを見ていても、何かの拍子でその人の映像が出てくることもあるだろう。著名人家族の宿命とはいえ、慣れるまでに時間がかかるだろうな。
スティーブ・マックイーンの笑顔があまりに優しいので、今日は映画の内容よりもそんなことばかり考えていた。もう40年も前のことなのにね。
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