腑に落ちたい時に読む本
関西人の会話で欠かせないものに『オチ』がある。オチ、あるいは落ちとも書くけれど、関西でオチのない話をすると軽蔑されると思ったほうがいいかもw
落ちるか落ちないかは別にして、関西人はオチのある話を好む。どうなるんやろうと期待しつつ、あぁなるほど、と思いたい。それが笑いの場合もあれば、驚きの場合もある。ときによっては怒りや悲しみのこともある。
でもどちらにしても、腑に落ちたと感じたい。そうしないと気持ち悪くて仕方ない。「この話何が言いたかったん?」と感じるのは最悪だと思っている。
そんな人にオススメの短編集がある。ストン、ストンと話が落ちるので、気持ちいいことこのうえない。
『素敵な日本人』東野圭吾 著という短編集。東野さんは長編作家としてだけでなく、短編も素晴らしい。この作品集は様々なジャンルを含んでいて、どの短編も楽しめることうけあい。簡単に紹介しておこう。
『正月の決意』
商売で失敗した老夫婦が、元旦に自殺を決意する。だけど初詣に行った先で、いい加減な人間のくせにのうのうと生きている連中に出会って死ぬのが馬鹿らしくなるという物語。
『十年目のバレンタインデー』
交際していた女性が書いた小説を盗作して有名作家になっただけでなく、その女性を殺してしまった男。殺された女性の友人は刑事になっていて、その男を追い詰める。
『今夜は一人で雛祭り』
温厚で耐え忍んできたと思っていた母の死後、残された雛人形から母の姑に対する怨念を知るという物語。
『君の瞳に乾杯』
ギャンブルにハマる遊び人をよそおいながら、指名手配の人間を追う刑事。他人の顔を覚えるという特技ゆえ、その仕事に就いている。ラストでは整形をしていた女性の瞳の色で指名手配犯だと見破る。
『レンタルベビー』
子供を持った経験のない女性が、本物そっくりのロボットで育児を体験する。恋人と同棲して赤ちゃんを育てるが、その恋人も実は体験用のロボットだったというオチ。
『壊れた時計』
人を殺した犯人は完璧主義。そのままだったら絶対に逮捕されなかったのに、被害者の壊れた時計を直したことで逮捕される。
『クリスマスミステリ』
成功するために年上の脚本家女性に近づいた男性俳優。有名になって邪魔になった彼女を殺そうと思ったが失敗。だけどその女性は自殺してしまう。ところが自殺はその男に対する逆襲だった。
『水晶の数珠』
長男にだけに伝わる秘密の数珠。一度だけしか使えないが、時間をさかのぼることができる。父と子の心温まる物語。
そしてボクがもっとも感動して泣いたのが『サファイアの奇跡』という物語。
小学生の子供が、神社で願い事をする。そのとき野良猫がそこにいた。イナリと名付けられた猫は彼女になつく。だけどある日、イナリは交通事故で死んでしまった。
その女性が大人になったとき、死んだはずのイナリが奇跡を起こす。そして小学生時代の彼女の願いをかなえてくれるという物語。感動してマジで泣いてしまった。
という物語が収録されている。どの作品もストンと腑に落ちるので、とても気持ちよく読めた。
唯一腑に落ちないのはこの『素敵な日本人』というタイトル。
たしかに正月や雛祭り、あるいはクリスマスやバレンタインデーが登場するけれど、このタイトルはないよなぁ。誰が決めたんだろう? 編集の人かな?
ちょっとセンスが悪すぎて、オチがないような気がしたわw
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