SOLA TODAY Vol.931
日本の公立学校教育で問題になるのは、誰に合わせて授業を進めるかということ。
勉強ができる子に合わせれば、ついていけない子が出てくる。かといってできない子供に合わせると、できる子には退屈な時間でしかない。もっと学力を伸ばせる子供の能力を抑圧することになるかもしれない。
結局は中途半端な中間地点をさまようことになる。まだそれならいい。できない子は追いつこうとするし、できる子は自分なりに勉強を進めるだろう。
だけど日本の社会システムは、できない人を基準にして動いている。その弊害は思っているより大きい。
とても説得力のある記事だった。海外在住の著者は、残り1年になった生命保険の支払いを一括で払おうと思った。多少は割引になるし、毎月引き落とすという手間もなくなる。
それで生命保険会社に電話をすると、振込用紙を日本の自宅に郵送するので、それで支払ってほしいとのこと。海外に住んでいるので、銀行振込で対応してほしいと頼んだが、それはできないの一点張り。日本に戻って生保会社の店頭に行くか、振込用紙での支払いしけ受け付けられないとのこと。
かなり大手の生保会社らしいけれど、いまだにこんなことになっている。その理由を関係者に尋ねたところ、日本の企業は『弱者』にフォーカスしているということだった。この場合は、ネットを使えない高齢者を基準にしている。
これがどれだけの無駄を生み出しているか、記事から抜粋してみよう。
『払込用紙の場合、紙代や印刷代のコストがかかる。顧客情報データの出力、封書の制作や郵送料、どれもコストがかかる。さらに、顧客が払込用紙をもって銀行の窓口に出向くのも時間コストがかかる。銀行の店頭では入金と払込用紙の金額が一致しているかを複数の銀行員がチェックする作業にもコストがかかる。
コンビニエンスストアでも取り扱ってくれるが、それも最低1人の店員の人件費がかかる。店頭でバーコードを読取したデータを金融機関などの決済センターで処理するのもコストがかかる。決済センターから保険会社の口座へ入金すると、最後の照合作業ももちろんコストがかかる』
もう気が遠くなるよね。ネットバンキングを利用すれば数分ですむことに関して、大手企業はこれだけ無駄なコストをかけている。そのために人を雇っているわけだから、日本の労働生産性が低いと世界から揶揄されるのは当然だろう。
この記事にも書かれているが、デンマークで列車の切符を買うとき、クレジットカードしかダメらしい。現金は一切受け付けないし、買い方の説明も詳しく記されていない。自分で調べる能力がなかったり、クレジットカードを持っていない人は『歩け』ということ。
社会全体のことを考えると、『弱者』よりも『強者』に合わせるほうが進化するだろう。先ほどの生保の件でも、ネットしか使えないようにしたら、なんとかして高齢者も新しいシステムを使うはず。だけどできない人に合わせているから、いつまでも先に進まない。
『弱者』を大切にする社会はいいことだと思う。日本はそういう意味では、思いやりのある国家だろう。だけどそちらの方向ばかりを見ていると、気がついたときには世界から取り残されているということになりかねない。いろいろと考えさせられる記事だった。
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