あの世の父とつながる鍵穴
人間は不思議なもので、意図せずに『何か』を引き寄せてしまうことがある。
2日前のブログで、『ザ・ウォーク』という映画の感想を書いた。それは1974年の出来事を映画化したもので、ニューヨークのワールドトレードセンターが完成したときの物語だった。つまりツインタワーが『生まれた』ときの話。
そしてまったく意図せずに、内容も知らずに選んだ作品が、なんとツインタワーが『死んだ』ときの物語だった。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(原題: Extremely Loud & Incredibly Close)という2011年のアメリカ映画。
2001年9月11日に起きた、いわゆる『911テロ』を扱った作品。フィクションなんだけれど、とてもよくできた物語。ツインタワーが完成したときの映画を観たばかりだったから、よけいに切なくて泣いた。
主人公はアスペルガー症候群を抱える11歳のオスカーという少年。普通の人とはちがうけれど、素晴らしい頭脳を持っている。そんなオスカーの能力を知る父は、いつも彼にテーマを与えることでその能力を磨き、自信を持って生きていけるよう教育していた。そんな父をオスカーは心から愛していた。
だけど911テロで父は命を落とす。商用でたまたまビルにいたときテロに遭遇した。父からの留守電を聞いたオスカーは、母が知れば心を打ちのめされると思い、コピーを残して消去してしまう。だけどそのことをずっと重荷として心に抱えていた。
ある日、父が所有していた花瓶のなかに、小さな袋に入った鍵を発見する。その袋には『ブラック』と記されていた。これは父からのメッセージであり、自分に対する新しいテーマだと感じたオスカーは、その鍵に合う鍵穴を探そうとする。
そのために近郊の電話帳からブラックという姓の人を探し、鍵を持って一人ひとり訪ねていく。その人たちすべてに911に関するドラマがあった。思い出すだけで泣けてくる。そして父が残したあるメモによって、ついにその鍵穴が見つかる。そのエピソードにも心が震えた。
オスカーが見つけたものはなんだったのか? それを知りたい人は、ぜひこの映画を観て欲しい。少年が父の死を受け入れていく心の過程が、鍵穴の探索とともに描かれていく。それが切なくて美しい。
亡くなった父親役のトム・ハンクスは素晴らしい演技だった。さらに母親役のサンドラ・ブロックにも泣かされたなぁ。彼女の秘密の行動をラストで知って、ボクは涙腺がボロボロになった。
そして何よりもすごいのは、オスカーを演じたトーマス・ホーンという少年。他の映画に出演していないようだけれど、それがもったいないと感じほど迫真の演技だった。本当にいい映画だったなぁ。
それにしてもツインタワーの生と死をほぼ同時に映画で観るなんて。言葉にできないほど、不思議な気分になってしまった。
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