SOLA TODAY Vol.967
『貧すれば鈍する』という言葉がある。どれだけ頭のいい人でも、貧乏になると愚かになってしまうことを指している。
それは個人だけでなく、国家に対しても当てはまるらしい。
頂上にこの行列… エベレストでさらに4人死亡、混み合う「死のゾーン」
今月の24日、エベレストで4人も亡くなるということが起きている。この1週間で合わせて8人が亡くなっているとのこと。
もちろん世界最高峰と呼ばれている山だから、危険なのは当たり前。万全の準備をしていても、命が危険にさらされることはある。
だけど亡くなった人たちの理由が尋常ではない。この写真がすべてを物語っている。
まさかこんなことになっているとは……。頂上に向かって人間の列が途切れることなく続いている。24日に亡くなった人は、この混雑に巻き込まれて12時間も身動きできず、疲労の末に亡くなったとのこと。
これほど混雑するのは、登山できる時期が限られているから。それゆえ登山者が大挙して押しかけることになる。でも本当の問題はここじゃない。
なぜなら誰でも急に思い立ってエベレストに登ることはできない。ネパールかチベットに申請することで、登山許可を得ることが必要になる。だからこの写真のような事態を防ぐためには、登山者数を制限すればいいだけのこと。なぜそれができないのか?
それはネパールが貧乏だから、まさに『貧すれば鈍する』で、まともな思考ができない状態になっている。
登山者に登山許可を出すにあたって、一人当たりの手数料はなんと120万円にもなる。貧しい国家にとって、こんな美味しい話は無い。だから登りたいと申請する人に対して、簡単に許可証を出してしまう。それはチベット側でも同じらしい。
ボクはこの記事を読んで、唖然とするしかなかった。こんな状況になるのがわかっていて、なぜエベレストに登りたいと思うのか理解できない。そんなボクでも、人間が危険な山に登ろうとする心理は理解している。
困難をくぐり抜けた達成感がその理由のひとつだろう。さらに大きな理由は、命の危険に関わることで『いま』という瞬間に全力で集中できること。人間はつい過去や未来に意識が向いてしまうけれど、『いま』にいる瞬間ほどエクスタシーをもたらすものはない。それは悟りの境地でもあるから。
そんな『いま』という瞬間に到達するのを求めて事故で命を落とすのは、ある程度覚悟ができているはず。命綱なしで高層ビルのあいだを綱渡りするのと同じようなものだから。
だけど12時間も人間の渋滞で身動きできずに衰弱死するなんて、そこに『いま』なんてありえない。おそらく過去の後悔と未来への絶望という、『いま』から完全に切り離された状態での死だったと思う。
ネパールに抗議しても仕方ないんだろうなぁ。エベレストを目指す人が、この渋滞を想定内にするしかないんだろうね。
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