SOLA TODAY Vol.983
従来の常識にとらわれている限り、新しいものは生まれない。それは小説や音楽という創作活動だけじゃなく、商業活動についても言えることだと思う。この記事を読んで、そのことを改めて教えてもらえた気がする。
奈良市にあるトンカツ屋さんの記事。このお店、何らかの事情があってお金を払えない人には、無料でトンカツを提供している。この記事でも、肺ガンを患った男性の家族が無料でトンカツを食べていた。この男性は感謝の言葉を述べ、病気から復活したらお返ししたいと語っていた。
お店にはこんな貼り紙がしてあるそう。
「世の中お互い様ですので、お代は出世払いでもいいですし、忘れてもらってもいいです。少しでも元気を出すきっかけになればうれしいです」
飲食店の常識として、お客さんから代金をいただくというものがある。でないと商売にならない。だけどこの常識を見直すことで、このお店はこれまでにない新しい領域に入っていこうとしている。
興味深いのは、この制度を悪用するような人がいないこと。本当に困っている人が、食事代を無料にしてもらっているらしい。さらに興味深いのは、普通にお金を払って食べに来る人が増えているそう。
このお店のやり方に賛同することで、応援したいという人が大勢やってくる。いまはネットですぐに情報が拡散されるから、こうした口コミほど強いものはない。結果として集客アップにつながっている。
自分は定価を支払って食べているのに、事情があって無料で食べている人がいるのは不愉快だ、と思うような人はそもそもこの店に来ないだろう。だからトラブルもないんだろうね。
このお店の店主は、かなりやり手だと思う。事情がある人は無料というだけじゃなく、新しい試みも始めている。それはスポンサーを募ること。
『メニュースポンサー』と名付け、商品代金の一部を地元の企業に出してもらっている。おそらく店内で宣伝してもらえるんだろう。その分、お客さんからもらう食事代を安くするというもの。
「客も安く食べられるし、企業も知ってもらうチャンスがある。僕たちも客に喜んでもらえる。3ついいことができている」と店長が述べている。いやいや、なかなかすごいよねぇ。マジで素晴らしい!
これからの時代、win-winの関係が基本になるんだと思う。出し抜いた人間が利益を得るんじゃなく、関わっている人たちのすべてが笑顔になれることが、これからの新しい常識になっていくと思う。このお店のトンカツが食べたくなってきた。
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