普通の幸せって何だろう?
普通というのは便利な言葉。だけどよく考えたら、これほど曖昧な言葉はない。
普通ってなんだろう? 普通の幸せってどんなものだろう?
昨日、そんなことを考えるミュージックビデオを見た。来月ニューアルバムをリリースするエド・シーランが、次々にシングル曲のビデオを公開している。昨日アップされたのは『Beautiful People』というタイトルで、ソウルミュージックのニューフェイスとして飛ぶ鳥を落とす勢いのカリードとコラボした曲。
ちなみにカリードも今年になって『Free Spirit』というセカンドアルバムをリリースしている。これもメチャメチャいいよ〜!
さてエド・シーランのビデオだけれど、いかにも庶民っぽい中年夫婦が空港で並んでいるシーンで始まる。ところが突然、超豪華なリムジンに案内される。そこからセレブの世界に巻き込まれてしまうんだけれど、二人は驚きながらも庶民感覚が最後まで抜けない。
誰もが憧れるシチュエーションであっても、自分になじめないものは違和感しかない。この夫婦にとって普通というのは、普段の自分たちの生活なんだろうね。そんなことを感じさせる、とても面白いミュージックビデオだった。
そして普通の人の1週間を描いただけ、という映画を観た。なんてことない作品なんだけれど、ボクはこの映画に惹きつけられてしまった。
『パターソン』という2016年のアメリカ映画。パターソンという街に住んでいるパターソンの1週間を描いた作品。主人公のパターソンを演じているのは、アダム・ドライバー。最新の『スターウォーズ』シリーズで、ハリソン・フォードが演じるハン・ソロを殺した息子役の俳優さん。カイロ・レンという役名を聞いたら、ああ、と思う人が多いだろう。
パターソンは市バスの運転手。月曜から金曜日までは午前6時過ぎに起きて、シリアルを食べ、弁当を持って職場に向かう。そして一日中バスを運転して、決まった時間に帰る。そして夕食後は愛犬の散歩に行くついでに、馴染みのバーでビールを一杯ひっかける。
まったく普通の人物。唯一の趣味は詩を書くことで、『秘密のノート』に詩を書きためている。妻もまったく普通の女性だけれど、アーティスト傾向が強い。夢はカップケーキの店を開くことや、カントリー歌手になること。はっきり妻と言ったわけじゃないので、もしかしたら同棲している恋人かもしれないけれど。
このカップルが実にいい。互いの本質を理解していることがよくわかる。いまより幸せになろうとしながらも、いまの生活を大切にしている。うまく言えないけれど、この独特な世界観にハマってしまう。不思議な映画だよなぁ。
特に大きな事件は起きない。事件っぽいものとして、バーの飲み友達が恋人にフラれて拳銃騒ぎを起こす。パターソンの部屋の写真が元軍人だと示唆していたから、とっさに銃を奪って友人を抑えた動きはまさに兵士の行動だった。
もうひとつ大きな事件は、夫婦の留守中に愛犬が『秘密のノート』を噛みちぎってしまったこと。このことによってパターソンはかなり落ち込むけれど、永瀬正敏さんが演じる日本人の詩人に出会うことで、再び創作の世界に入っていくという結末だった。
とにかく殺人犯も、テロリストも、宇宙人も、刑事も、ゴジラも出てこない。ただただパターソンの日常を描いただけ。だけどボクはこの映画が好き。少し調べてみると、アダム・ドライバーはこの映画でいくつかの男優賞を受賞している。
エド・シーランのビデオでも、そしてこの映画でも思ったことがある。普通というのは、その人にとって普通だということ。セレブにとっては派手な生活が普通であり、パターソンにとってはバスを運転して詩を書くことが普通。
つまり普通というのは、自分らしく生きることなのかもしれない。そしてその生き方を受け入れたとき、普通であることの幸せを享受できるんだと思う。そんなことを感じさせてもらえる映画だった。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。