働き方改革が改悪になってる
ボクがサラリーマン時代に強く意識していたことがある。それは経営者意識あるいは自営業者意識というもの。
会社に雇われている限り、その組織の一員として働く義務がある。その義務の遂行によって、会社は労働者を守る義務が生じる。それが労働法というもの。
ただ組織や法律の庇護下にあると、安定を求めてしまう。そうなると無難に過ごすことに意識が働いて、思い切った行動や冒険ができなくなる。だからボクは自分がその会社の経営者、あるいはその会社と契約している下請け企業の意識を持つように心がけていた。
個人事業なら結果を出すことが求められる。競争に負けて失敗すれば、他の業者に変更される。誰も守ってくれない。そんな緊迫感を失わないよう、自営業者意識をキープしようと心がけていた。
でもこれは個人の『意識』の問題であって、雇われている側のモチベーションを高めるためのもの。会社の経営者がそれを具体化するのはまちがっている。
タニタの働き方改革「社員の個人事業主化」を労働弁護士が批判「古典的な脱法手法」
体重計で有名なタニタが、社員の個人事業主化を進めているそう。雇用契約を解除することで、社員を個人事業主として扱う制度。つまり正社員を下請けにするということ。その方法を記事から抜粋してみよう。
『報酬については、社員時代の給与をベースに「基本報酬」が決まり、「基本業務」におさまらない仕事は「追加業務」として受注して、成果に応じて「成果報酬」も受け取ることができる。
また、「基本報酬」には、会社が負担していた社会保険料や通勤交通費、福利厚生も含まれる。就業時間に縛られることがないので、出退勤の時間も自由に決められるといメリットがあるようだ。タニタ以外の仕事を請け負うのも自由で、契約期間は3年というものだ』
これだけ見ていると、かなり画期的な方法だと感じてしまう。タニタの社長も『働き方改革=残業削減』という風潮に疑問を持っていて、やる気のある人がどんどん稼げるようなシステムにしたいということで、この個人事業主化を進めているそう。
だけどこの記事で指摘されている通り、これは経営者が労働法の抜け穴として悪用しかねない方法だと思う。実質的にはサラリーマン時代と変わらない命令系統で仕事をしているのに、会社の経理上は給料ではなく外注費になる。つまり雇用契約が存在しないので、いつでも首を切ることができる。
労働法があるから、解雇規制や残業代、有給、労災、育児介護休業、最低賃金等が保証されている。会社がこれらと同等のものを提供しているなら問題ないだろうけれど、雇用契約ではないということで無視する企業が出てくるかもしれない。現状ではグレーすぎると思う。
社員のモチベーションを高めるにはいいけれど、会社内に妙な分裂意識を生み出してしまうような気がする。いままでの同僚がちがう待遇を受けることになるんだからね。
雇用契約とフリーランスの線引きを明確にしておかないと、このやり方を曲解する企業が出てくるかも。個人事業主意識は、経営者から与えられるものではなく、社員それぞれが自分のなかで育てるものだと思うなぁ。
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