『摘出否認』って知らなかった
日本の民法がいまの時代に合致していないことは、かなり以前から指摘されている。明治時代に作られたものが残っているわけだから、現代社会との矛盾を呈するのは当然だろう。
法律というものは、その時代に合わせて変えていくもの。ここ数年になってようやく憲法改正が議論されるようになってきた。時代に合わせて憲法を変えていない国なんて、先進国では日本くらいだけだからね。
大元の憲法でさえそんな状態だから、民法が放置されているのは仕方ないのかもしれない。だけど民法というのは、人間社会のもめごとを根元で支える法律。それゆえ古い体質が残されたままだと、人間の命に関わることになってしまう。
逃げれば子供を殺す…DV夫の狂気がもたらした「嫡出否認」の不条理
ボクはこのリンク先の記事を読んで、初めて『摘出否認』という言葉を知った。そしてその理不尽な法律に、ただただ驚くしかなかった。
この『摘出否認』について書かれた部分を抜粋してみる。
『民法では 「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定められている。さらに夫の側にだけ、妻が産んだ子供を自分の子供でないと否認することができる「嫡出否認権」が、子の出生を知ってから1年以内に限って認められている』
この法律においてもっとも不条理な部分は、夫の子供ではないと否認することができるのは、その『夫』あるいは『元夫』だけだということ。妻がどれだけ否定しても、法律上は認められない。これは明治時代の『家制度』の名残であって、家名を継ぐ人物を明確にするためのものだろう。
この不条理な法律は、リンク先の記事のような事例において大きな不幸を生んでしまう。
夫が狂人のようなDV男で、子供と二人で命からがら逃げ出して女性がいる。夫は絶対に妻を殺すと宣言していた。もし妻が逃げたら、子供や妻の家族を殺して俺も死ぬと宣言していたらしい。明らかに常軌を逸している。
だから引越し先の表札も変えて、その女性は夫から逃げ続けた。そんな生活では誰かに頼りたくなるだろう。ある男性と親しくなり子供を出産する。出生届を出そうとしたとき、その男性が父親になれないことを告げられた。
現状の法律では、DV夫を父親にするしかその子供の戸籍を作れない。もし知り合った男性を父親にするのなら、DV夫に連絡を取って『摘出否認』を申請してもらうしかない。だけどそんな狂人のような男に頼めるだろうか?
結局二人の子供は無戸籍で育つことになった。そして戸籍のない娘が成人して出産したことで、その子供、つまり逃げた女性の孫までが無戸籍になってしまったとのこと。
まぁもちろんその女性は正式に離婚しないで子供をもうけたわけだから、一般的には不倫ということになる。だけど彼女の状況を考えたら、離婚手続きによって自分と娘の命を危険にさらすことになる。民法はそういう女性を守ってはくれない。
このケースは現代社会において特殊な例ではないと思う。同様のことが起きる可能性は高い。過去の遺物となりつつある法律を抽出して、時代に則したものに変えていくのが政治家の仕事だろう。いまの政治家たちを見ていると不安しか覚えないけれど、なんとかやってもらうしかないよね。
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