人間って、陰謀説が好きだよね
世間が注目する事件や事故が起きると、必ずと言っていいほど陰謀説が登場する。香港のデモに関しても、常に中国政府の陰謀説が流布されていた。真実かどうかに関わらず、陰謀説というのは人々の興味を引きつける。
それが高じてくると、日常生活に陰謀論を持ち込んでしまうような人も出てくる。ある種の被害妄想のような状態になってしまい、自分がバスに乗り遅れたのも、仕事がうまくいかないのも、大雨が降るのも、すべて闇組織の陰謀のせいだと言い出しかねない。それに近い人がネットにはいっぱいいるからねwww
それほど人間という生き物が、陰謀説を好むということだろう。そして当然ながら、小説や映画になる。
『ヒンデンブルグ』という1975年のアメリカ映画を観た。
この写真は実際の写真でもあり、映像が映画にも使用されている。1937年に起きたヒンデンブルグという飛行船の爆発事故を扱った映画。この飛行船はドイツのツェッペリン社の制作で、ナチスドイツの威信をかけて運用されていた。
1937年といえばドイツでナチスが台頭して、2年後には第二次世界大戦が勃発するという緊張した時期。まだ戦闘状態ではなかったドイツとアメリカ間を、この飛行船は乗客を乗せて運行していた。
ドイツのフランクフルトを出た飛行船は、アメリカのニュージャージーにあるレイクハースト海軍飛行場に着陸しようとした寸前に爆発して墜落した。乗客乗員35名と地上作業員の1名を加えた36人が死亡している。こんな恐ろしい事故だったけれど、60人以上の人が助かっている。着陸寸前だったからだろう。
事故の原因として、いろいろな説が出た。危険物であるヘリウムを積んでいるので、火気厳禁の恐ろしい乗り物であるのは事実。静電気の放電等の理由がいくつか出されていて、そのなかには陰謀説もあった。
それはドイツ政府工作員による自爆テロではないか、という陰謀説。ドイツでは飛行機の実用化を進めていて、「飛行船は時代遅れ」ということを世界に知らしめる必要があった。それで大衆の面前で爆発させれば、飛行船の危険度を認知するだろうというもの。
事実この事故をきっかけにして、飛行船は世界的に衰退していくことになった。
この映画はその陰謀説を採用することで、エンタメとして映像化した作品。制作されたのが1975年ということで、『ポセイドンアドベンチャー』や『タワーリングインフェルノ』的なパニック映画の路線を狙ったものだと思う。
ただストーリー的にもっさりして展開が遅いので、ちょっと飽きてしまう部分が多かったのが残念。ところがカラー作品なのに、爆発の瞬間にモノクロ映像になる。それは事故のときに撮影された映像と重ねるため。
さすがにこのシーンは心に迫ってくるものがあった。炎をあげて墜落していく飛行船と地上で逃げまどう人たちの映像が、映画での撮影シーンと重なる。このシーンに関してはすごい演出効果があったと思う。一気にドキュメント感が強まったからね。
当時のラジオ中継もそのまま流されているので、事故の恐ろしさを十分に実感することができた。まぁ、それだけの映画なんだけれど。
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