現実より仮想世界を選んだ悲劇
小説や映画というのは現実とはちがう。現実の出来事を題材にしていても、それらは仮想世界でしかない。
ボクはファンタジーも書けば、ホラー小説も書く。ホラーの場合なんか、かなりエグい内容が多い。だからと言って、ボクがそんな人間だというわけじゃない。自分に内面にないからこそ、フィクションとして書くことができる。それが想像力。
でないとミステリーを書いている作家は、全員が犯罪者だということになってしまうwww
ただ作家はそうでも、読者はちがう場合がある。フィクションだとわかりつつ、激しく感情移入することで現実世界との境界線があいまいになってしまう人がいる。悪役をやった俳優さんが、「あなたがそんなひどい人だと思いませんでした」とファンの人に言われるようなものだよね。
そういえばスターダストレビューの根本要さんが同じことを言っていたな。そんな人だと思いませんでした、とある曲の歌詞について言われたらしい。そんなことを言われても、とまどうだけだよなぁ。
そんな狂信的なファンが犯罪者だったら? このテーマについて書かれた小説を読んだ。
『ファインダーズ・キーバーズ』下巻 スティーブン・キング著という小説。上巻の感想については『物語に取り憑かれた男の狂気』というブログに書いているので参照を。
定年退職刑事である『ビル・ホッジス』シリーズの第二弾小説。私立探偵となったホッジスが活躍する物語。
上巻は二人の人物が事件に関わった。
モリスという1970年代に人気作家を殺して現金と作品が書かれたノートを奪った殺人犯。ノートは土に埋めたが、別件で終身刑を受ける。だが老人になって仮釈放された。彼の生きがいは狂信している物語の続編が書かれたノートを読むこと。
もう一人はビートという現代の高校生。彼も同じ作家の大ファン。そして殺された作家の現金とノートを偶然に発見した。そのことで大きなトラブルに巻き込まれる。
つまりモリスとピートの戦いになるのは必至。最終的にピートの妹を人質に取ったモリスが、作家のノートを返すようにピートを脅す。そこへホッジスたちが関わることで事件を解決に導くという物語。
モリスとピートは祖父と孫ほど年齢は離れている。だけど二人は同じ性質を持っていた。それは殺された作家の小説に登場する主人公の狂信者であること。だけど二人の運命を分けたのは、仮想世界より大切なものがあるかどうかだった。
ピートはノートよりも自分の妹が大切だった。だから命をかけて妹を守ることを選んだ。
だけど老人のモリスにとっては、そのノートが全てだった。そのために大勢の人を殺したモリスは、そのノートと一緒に文字通り燃え尽きてしまう。仮想世界にしか自分の居場所はがない不幸な人物だったんだね。
モリスはかなりの悪人だった。だけど小説を書く才能もあった。それでも結局は現実世界に生きることができなかった。ひどいやつなんだけれど、悲哀さも感じさせるキャラだったなぁ。
とりあえず事件は解決したけれど、いよいよ第三弾が待っている。そのネタふりはこの物語のラストに書かれていた。第1弾でホッジスの恋人だけだなく、大勢の人間を殺したブレイディという犯人。もう少しで二千人以上の人間を爆弾テロで殺すところだった。
第1作のラストでは、ホッジスたちにテロを阻止され、頭に傷を負ったことで入院していた。意識はあるけれど、記憶を完全になくしていた。まるで廃人のように隔離病棟で暮らしている。
ところがホッジスはそれがフレイディの演技ではないかと疑っていた。さらに頭部を強打したことで、この凶悪犯の青年は、どうやら念力等の超能力を身につけた可能性があった。いよいよスティーブン・キングらしくなってきたね。
つまりこのシリーズのラストである第3作において、フレイディとホッジスの最後の戦いがあるということ。それも超能力者になった怪物との対決。いまからどうなるのか想像して、とても落ち着かない気分になっている。早く読みたいなぁ。
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