失敗は次のステージへの号砲
失敗や挫折は苦しいもの。それまでの努力が否定されるようで、本当にへこんでしまう。自分には才能がないと思い知らされたような気分になる。
でもそこで足を止めたら本当に終わる。次の失敗を恐れるあまり行動できなくなると、他の分野にも意識が向かず八方塞がりになってしまう。
真の才能とは、失敗や挫折を自分の糧、あるいは過程と見なすことで、次のステージへと進むための号砲だと思えることだと思う。
まさにそのとおりの人生を歩んだ女性の物語を観た。
『モリーズ・ゲーム』という2017年のアメリカ映画。モリー・ブルームという実在の女性が書いた自叙伝を映画化した作品。予備知識なしで観たけれど、めちゃめちゃいい映画だった。新しい作品なのでネタバレしないように注意して紹介しよう。
モリーはオリンピックを狙えるほどのスキー選手だった。きびしい父親の指導を受けて、本気でアメリカ代表を目指していた。ところが選考会で大怪我を負ってスキー選手の道は閉ざされてしまう。
父は学業成績にも容赦ない人だったので、モリーは勉強もできた。ロースクールの大学院を出て弁護士になることを目指していたけれど、あえて休学してLAで暮らす。そして不思議な偶然が重なって、ポーカー勝負の胴元の秘書をするようになる。
彼女がそんな道に走るのは、父親との確執が原因。このあたりは映画の核でもあるので、これ以上触れないようにしておく。とにかく何かにつけて才能のあったモリーは、著名な俳優やスポーツ選手、IT企業の経営者等からのチップで大金を稼ぐ。
個人経営のポーカー賭博だけれど、手数料を取らなければ違法じゃない。その賭場は、彼女の才覚によって大繁盛した。そのことをねたんだ胴元は彼女をクビにしようとする。それを察したモリーは、一計を案じて自分が胴元となる新しい賭場をスタートさせる。
ところが男の妬みは尽きない。その新しい場所でも大儲けをすることで、中心となっていたメンバーに裏切られる。それでもくじけない彼女は、今度は東海岸に移動してニューヨークで新しい賭場を開く。これまた大盛況になる。
ところがロシアマフィアに目をつけられる。かなり高額の賭け金が飛び交うので、未回収の金銭が発生する。その金銭の取り立てを請け負うというマフィアの申し入れを断ったことで、彼女は瀕死の重傷を負わされる。
そこでマフィアの影響から逃れて賭場を維持するため、泣く泣く違法である手数料を取ってしまう。ほんの半年ほどのこと。なのにFBIのタレコミ屋がいたことで彼女は逮捕される。FBIの目的は彼女の逮捕ではなく、彼女が保有しているセレブたちの極秘メールだった。
そして裁判を受けるモリー。その前にFBIは司法取引を持ちかけてくる。そこで彼女が下した決断とは?
とまぁ、こんな雰囲気の映画。何が素晴らしいって、このモリーを演じたジェシカ・チャステインの鬼気迫る演技。『女神の見えざる手』という政治ロビイストを演じた彼女の映画を観たとき、本当にすごい女優さんだと思っていた。
この映画でもその演技は健在で、彼女なしには考えられない作品だと思う。『オデッセイ』のときにマット・デイモンの上司役を演じた彼女が別人に思えるほどこの役に成り切っていたと思う。
いま公開中の『IT〜それが見えたら終わり』の続編で、彼女が大人になったベヴァリーを演じているんだよね。レンタルを待つ予定だったけれど、彼女が演じているのなら観たくなってきた。
そしてこの映画は脚本と編集も素晴らしい。会話のテンポ感が軽快で深く、登場人物たちのやり取りから目が離せない。そして過去と現在がうまく編集されていて、監督の才能の高さを感じる作品だった。マジでオススメの作品だよ。
モリー・ブルームが書いた原作を探したけれど、残念ながら邦訳されていないらしい。原作が気になるので、誰か翻訳してくれないかなぁ。
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