相手の本音はわからない
人間には想像力があるから、他人の気持ちを推しはかることができる。それがうまく機能すれば、思いやりという行為が成立する。
ただし想像力を働かせる場合、その人の物差しでしか判断できない。相手の気持ちを思いやっているつもりでも、結果として傷つけてしまうこともあるだろう。それほど他人の本音はわからないということ。
これは人間同士だけではなく、植物に対しても同じことが言えるらしい。
雨が降らずに土がカラカラになったあと、雨の音を耳にしてほっとすることがある。そして同時に思う。きっと山の植物たちも喜んでいるだろうな、と。
ところがそうでもないらしい。人間の物差しでそう思うだけで、植物の本音はまったくちがうという研究結果が出ている。
雨が降って喜ぶどころから、植物たちはパニックになっている。
今年の10月29日に発表された米国アカデミー機関紙の論文によると、植物がパニックになる理由が述べられている。
『なぜ植物は雨が降るとパニック状態に陥るのだろうか。雨粒には、微生物やウイルス、真菌胞子が含まれており、最長10メートルの範囲であらゆる方向に広がる。つまり、雨は、植物が生きるために不可欠である一方、病原菌を拡散させる主な要因でもあるのだ』
植物の生育に水は必要。だから水分を拒否しているわけじゃない。だけどそれ以上に、雨という現象は植物にとって感染症の危険を伴うものだということ。これは自由に動ける人間にはわからないことだよね。
雨が植物に触れると、植物は複雑な科学信号を発して雨から身を守るために備えるそう。そして『ジャスモン酸』という植物ホルモンを放出して、周囲の植物に危険を伝えている。植物たちのあいだに『共通語』が存在しているということだね。
雨が降って植物が喜んでいるなぁ、と思うのは人間の独断的な判断なのかもしれない。我が家のサボテンたちだったら、土だけにそっと水をあげられる。雨粒が当たることはない。
だけど自然のなかで生きている植物たちは、水分を求めつつも、命の危険と戦っているんだね。相手の本音を理解するのは、なかなか難しいよなぁ。
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