欲張り過ぎたのが残念
映画や小説というのは、時間や分量の制限がある。だから盛り込みたいことが山積みでも、泣く泣く捨てる部分が出てくる。スティーブン・キングのような著名な作家なら、好きだなだけ長編を書くことができるだろうけれどね。
でもそこが人間心理の難しいところ。せっかくのアイデアだと思うと、捨てるのが惜しくなってしまう。できる限り多くの要素を盛り込もうと必死になってしまう。そこで無理をすると、散らかり放題のゴミ屋敷のようになる。
ゴミ屋敷とまではいかないけれど、欲張り過ぎたのがやや残念な映画を観た。設定やキャラがいいだけに、そこだけがもったいないと感じた作品だった。
『ザ・アウトロー』(原題:Den of Thieves)という2018年のアメリカ映画。ジェラルド・バトラーが主人公のニックという保安官を演じている。
新しい映画なので、ネタバレしないように注意しよう。タイトルの『アウトロー』はニックが率いるカリフォルニア郡保安局のチームのメンバーたちのこと。犯罪捜査のためなら違法な手段も使う。映画がスタートしても、どちらが悪役かわからないほど。
自らも『バッチを持ったギャング』と名乗っているwww そんなチームのリーダーだから、ニックもかなりのやり手。『スリー・ハンドレット』というボクの大好きな映画がある。あのときのカッコいいジェラルド・バトラーの姿とかぶる。
悪役を率いるのはメリーメンというもと海兵隊の男。かなりの知能犯で、銀行強盗を得意としている。メリーメンはアメリカ連邦準備銀行の預金を狙う。チームのメンバーも洗練されていて、かなり魅力的なキャラたちだった。
十分に楽しめる作品だったけれど、先ほど書いたように欲張り過ぎた感がもったいなかった。強盗の手口が巧妙で、ラストにどんでん返しも仕込まれている。だからそれだけでも伏線がかなり必要で、情報量が多い。
そこへニックの家庭問題が起きる。妻が男を作って離婚を申し立て、愛する二人の娘を連れていく。犯罪者には手厳しいニックも、妻や娘のことになるとおろおろする。設定としては面白いけれど、この家庭問題がかなり中途半端になってしまった。とりあえず必死のパッチで放り込んだという印象。
さらにメリーメンとの対決も頭脳戦の部分と銃火器のやり合いが混在している。知的な部分で争うのか、それとも力勝負をするのか、そのあたりが絞り切れていない感が残ってしまった。もう少しどちらかに比重を置いたほうがよかったと思う。
それで削減した時間を使って、ニックが率いるメンバーたちのキャラをもっと見せて欲しかった。頭脳優秀で強面で戦闘能力も高そうに見えるけれど、個人のキャラがつかみきれない。チームのサブキャラをもっと生かしてあればさらに面白い作品になったと思う。
と言いつつも、続編の制作が決まっているそう。ジェラルド・バトラーも引き続き出演するとのこと。どんな続編になるのか楽しみ。あまり欲張らなければね。
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