隔絶された社会は腐敗する
いやぁ、マジですごいなぁ。何がすごいって、ある小説の巧妙な設定。
正体不明のドームによって、小さな街が完全に孤立した。その設定をほどこすだけで、物語が核分裂のように広がりを見せる。さすがはスティーブン・キングだよなぁ。
『アンダー・ザ・ドーム』2 スティーブン・キング著という小説。文庫本で全4巻ある大長編で、そのうちの第2巻を読了した。それぞれの文庫が600ページ近くもあるので、一冊を読了するのにめちゃ時間がかかってしまう。だけど面白すぎて、毎日眠る決意をするのに努力が必要。
第1巻の感想については、『孤立した街の恐怖と絶望』という記事で書いているので参照を。
メイン州のチェスターズミルという街に、謎のドームが出現した。飛行機でも車でもその透明のドームを破ることはできない。第1巻の終わりで、アメリカ軍は巡航ミサイルを撃ち込むことを決めた。
第2巻に入ってもそのドームは健在。つまりミサイルでさえ傷一つ付けられなかった。ジョーという少年をリーダーにした3人の少年少女が、そのドームの秘密に近づきつつある。第2巻の終わりでは、どうも地球外生命が関わっているような予感。
ただしスティーブン・キングのこと。第3巻を読まないとわからない。とにかくこの街は完全に孤立している。アメリカ軍でさえどうしようもない。温室効果のような現象も見られ、外の世界と気温差が出てきた。食料も燃料も尽きつつあるので、この先地獄が待っているとしか思えない。
そして人間関係は破綻寸前。対立関係が明確になってきた。主人公である元軍人のバーバラ、新聞記者のジュリア、医者のラスティ、亡くなった元警察署長の妻のブレンダ、そして先ほどの少年たちは、この街の平和を守り問題を解決しようとしている。
ところが町政委員のビック・ジムはこの街を支配しようと画策する。新しい警察署長のランドルフを抱き込み、息子のジュニアたち不良連中を新しい警官に任命することで、治安維持目的で住民を恐怖で支配した。
とにかくドームがある限り、アメリカ政府は大統領の信任を受けているバーバラを守ることができない。つまりビック・ジムの独裁社会だということ。ボクはなんとなくこの男の雰囲気がトランプ大統領の顔と重なってしまうwww
ビック・ジムはわざとスーパーを閉鎖させることで、住民の暴動を誘発した。それは警察官の増員のための口実。さらにビック・ジムは自分に反対する二人の人間を殺す。そのなかにはバーバラを助けていたブレンダもいた。
さらに息子のジュニアはサイコパスで、二人の女性を殺している。この親子はバーバラが邪魔で仕方ない。そこで4人の殺害をバーバラの犯行と見せかけて、彼を無理やり逮捕する。とにかくやりたい放題。第2巻はバーバラが警察の留置場に閉じ込められたところで終わる。
とにかく胸糞悪い小説。陰謀と暴力がこれでもか、と読者に襲いかかる。さらに著者の描写はかなりエグい。司法や政府、さらに国軍が介入できない隔絶された社会が、どれほど腐敗していくものかを思い知らされる。
その胸糞悪さは、人間が心の奥深くに抱えているものだと思う。スティーブン・キングという作家は、そういう部分に光を当てるのが上手いんだろうね。だから気分悪くなりながらも、つい読み進めてしまう。さて、第3巻はどうなっていくのか。今夜から楽しみだなぁ。
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