少女を助けた亡き祖母の魂
ボクは泣き虫なので、映画を観ても小説を読んでもすぐに泣く。陳腐な表現だけれど、本当に心が揺さぶられるようになって涙が止まらなくなる。
昨日読了した小説も本気で泣いた。それは悲しみの涙じゃなく、感動によるもの。そしてその感動が今日になってもまだ続いている。その物語のことを思い出すだけで、またウルウルしてくる。はたから見れば、かなり怪しいオジサンだと思うwww
ジブリアニメの『思い出のマーニー』という作品を知っているだろうか? ボクはあまりよく知らず、何気なく観て感動した。本当に素敵な物語だと思って調べてみると、原作はイギリスが舞台だった。その作品をアニメでは日本の物語として再構成されていたらしい。
それでいつか原作を読もうと思っていて、ようやく実現した。
『思い出のマーニー』(原題:When Marnie Was There)ジョーン・G・ロビンソン著という物語。アニメの主人公の杏奈という名前は、この原作の主人公であるアンナから取ったらしい。たしかに日本の名前でも違和感はないよね。
だけど原作を考えるとマーニーを外すわけにいかない。だからマーニーは外国人のままで通したんだろうな。アニメを観たときにその辺りが気になったけれど、原作を生かすためには仕方ないよね。マーニーという名を日本語にするのは不自然だから。
でも原作は純粋にイギリスの物語、だから全体を通して違和感なく読み進めることができた。それゆえ、ボクとしては原作のほうがすんなりと入りやすかった。基本的なストーリーは原作と同じだけれど、日本の物語にしようとしているアニメは、いまから思うとやや無理があったのかもね。
だから原作を読んで、ボクはさらにこの物語が好きになった。単なるファンタジーとして語れない奥深さがある。知らない人のために簡単に物語のことを書いておこう。
アンナは孤児だった。父母は離婚していて、面倒を見ていた母は新しい夫とともに交通事故で死亡した。そのあと祖母に育てられたけれど、その祖母もすぐに亡くなってしまう。最終的に施設に行くことになり、やがてプレストン夫婦が里親となってくれる。
ロンドンで暮らしていたけれど、アンナは孤独だった。学校ではイジメにあい、母親と祖母に見捨てられたという思いから他人との関わりを持たないようにしていた。やがて病気の症状を見せるようになり、リトル・オーバートンという街で夏のあいだだけ暮らすようになる。
そこに見捨てられたような古いお屋敷があった。アンナはその屋敷に惹きつけられて、いつもながめて暮らしていた。やがてその屋敷の娘であるマーニーと知り合う。それまで友人のいなかったアンナは、マーニーによって救われる。
ところが様々なドラマがあって、マーニーが去ってしまう。忽然と姿を消してしまった。ここまでなら普通の話だよね。だけどオチを知ると驚く。ボクもアニメを最初に観たときは、そうきたか、と唸ってしまった。
種明かしをすると、マーニーというのは亡くなったアンナの祖母だった。つまりアンナ以外はマーニーという少女を見ていない。でも少女時代にマーニーの書いた古い日記が見つかる。そこには常識ではあるはずのないことが書かれていた。
それはマーニーとアンナの思い出の数々。時空の壁を越えて、孤独だった祖母と孫が同じ年齢の親友として出会ったんだね。あかん、これを書いているだけで泣けてきた。この不思議な出来事は、孫の成長を見てやれなかった祖母であるマーニーの想いも反映していたのかもしれない。
これは児童文学として書かれているけれど、大人にも読んで欲しい物語。日本を舞台にしたアニメでもいいから、またマーニーと杏奈(アンナ)に会いたくなってきたなぁ。
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