喪失が引き寄せた超能力と悪霊
この世はトレード・オフで成り立っているように見える。何かを得ることがあれば、同時に何かを失うというもの。逆に言えば、何かを失うことで得るものもあるだろう。
もし肉体の一部を失うことで、とてつもない超能力を得るとしたらあなたはどうする? それを受け入れるだろうか?
ただし、その能力をもたらしたものは悪霊かもしれないけれど……。
そんな仮定が物語となった小説を読んだ。
『悪霊の島』上巻 スティーブン・キング著という小説。著者の作品を完全制覇中なんだけれど、他の作品と同様にこの小説も超絶に長い。単行本でかなりフォントが小さいのに、なんと550ページほどあった。
読了するのに4〜5日もかかってしまった。これでまだ上巻なので、同じくらいの分量が残っている。まぁ、ボクとしてはドップリと物語の世界に浸れるので、長いほうがうれしいけれどね。
主人公はエドガーという男性。妻と大学生の娘が二人いる。建設業を経営しているエドガーは、かなり裕福で成功している人間だった。しかし建設現場でひどい事故に遭って死にかける。
どうにか命は助かったけれど右腕を失い、頭も強打したことで記憶があいまいになってしまった。しばらくは言語障害もあったほど。人格が変わったように怒りやすくなり、自分の感情をコントロールできなくなる。その結果、ずっと寄り添ってきた妻から離婚を言い渡される。
独り身となったエドガーは、療養をかねてフロリダに移住する。選んだのはほぼ無人島のようなデュマ・キーという名の島。避寒地として利用されている島で、1年を通して住んでいる人はほんの一部だけ。
エリザベスという80歳を超えた老女と、彼女の世話をしているワイアマンという高齢の男性だけ。そのエリザベスの所有する家で、エドガーは暮らし始める。その直後に不思議なことが起きる。それまで絵を描いたことなどないのに、無性に描きたくなった。
何かに取り憑かれように絵を描く。特に失ったはずの右腕に痒みが出るときはヤバい。超常現象のような体験をしながら絵を描く。そして完成した絵は素晴らしいだけでなく、驚くべき事実を表現していた。
一度も会ったことのない次女の恋人、離婚した妻が自分の友人と関係を持っていたこと、親友の会計士が自殺をしようとしていること等、エドガーが知らない事実を次々と絵に描き始めた。そしてその結果として友人の自殺を防いだり、妻の不貞を明らかにしていった。
やがてもっと凄いことが起きる。ある少女が変質者の男にレイプされて殺された。犯人はすぐに逮捕されたが、エドガーはその男が許せない。その思いを抱いていたとき、また失った腕が痒くなった。そして描いたのは犯人が命を落とすという絵だった。
翌日、その絵のとおりに犯人は拘置所で急死する。原因はわからないけれど、エドガーは自分のせいだと知っていた。さらに親友となったワイアマンは、過去に自殺未遂をやっている。そのときの銃弾が脳に残ったままで、いくつもの障害を抱えていた。
そのことを知ったエドガーは、ワイアマンを助けるための絵を描く。すると手術が無理だと言われていた彼の脳の銃弾が消えて健康を取り戻す。とにかくエドガーは絵を通じて未知の出来事を知ったり、誰かを殺したり、あるいは助けることができるようになる。
ただし、同時に恐ろしいことが起きていた。その鍵を握るのはエリザベスという老女。どうやら彼女も過去に同じ能力を持っていた。そして大勢いた姉妹たちに不幸な出来事が起きている。それを証明するかのように、幼いころに死んだエリザベスの双子の姉たちが幽霊になってエドガーに接触した。
エドガーの絵は画廊の目に止まり、新人の画家として華々しく第二の人生をスタートする。上巻はそこで終わるけれど、エドガーに何が起きているのかはまだわからない。おそらく下巻では、悪霊たちの謎が明かされるだろう。かなりヤバい雰囲気だけは感じている。
さて、下巻はどうなるのだろう? なんせスティーブン・キングだから、このまま穏便に終わるわけがない。他の本を少しはさんで、下巻を読もうと思っている。
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