すべてが裏目に出る悲しさ
ボクが子供のころ、バイオリズムというものが流行したことがある。人間は『身体』、『感情』、『知性』というものに周期的なリズムがあり、それらの波をグラフ化することで行動の指針とするもの。
いまから思えばかなりいい加減で眉唾。なんせ基準となるのが誕生日だから、それだけで笑えちゃうよね。誕生日が同じ人間なら、3つのリズムが同じだということになってしまう。それほど人間は単純じゃない。
ただボクは人間にはリズムがあると思っている。どことなく上げ調子のときと、そうでないときがある。だから波に乗っているときは一気に進むし、イマイチだと感じるときは慎重に動いている。
これは思い込みかもしれないけれど、流れが悪いなぁと思うと、なぜだかいろんなことがうまくいかない。誠実でかつ一生懸命なのに、やることなすこと裏目に出てしまうときがある。
まさにそんな負のスパイラルに陥った主人公が登場する映画を観た。
『ドライヴ』という2011年のアメリカ映画。ライアン・ゴズリングが主演しているんだけれど、ボクが過去に観た彼とはまったく異質なキャラだった。
『ラ・ラ・ランド』とも、『ブレードランナー2049』とも、そして最新作の『ファースト・マン』ともちがうライアンを観ることができた。どちらかと言えば好人物をの役が多い彼なのに、この映画の彼はまるで別人。
無口なんだけれど、キレると手に負えない乱暴者。平気で人を殺したりする。悪いこともやってしまう。だけど根は優しいという、かなり複雑な主人公だった。彼がこんな役をできることに感動した。ますます好きになったなぁ。そういう意味では、一見の価値がある映画。ただしかなりエグいので、血が苦手な人はやばいかも。
主人公のドライバーは名前のとおり運転の天才。車の修理工として働きながらも、ロスに住んでいるので映画のスタントマンもやっている。カーチェイスや車の横転なんかお手の物。その腕を見込まれて、窃盗犯のドライバーとしての裏稼業もあった。決して品行方正ではないけれど、物静かで無口な好青年として登場する。
ある日、同じマンションで暮らすアイリーンという女性に恋をしてしまう。彼女もまんざらでもない。アイリーンの息子もドライバーになついている。ところがせっかく恋が発展しそうになったとき、刑務所に入っていた彼女の夫が出所する。さっそく、裏目に出た。
だけど心優しい(ように見える)ドライバーは、出所したアイリーンの夫を助ける。刑務所で借金をしていたアイリーンの夫は、犯罪組織の手伝いをしないと家族の命まで狙われる状況だった。だから彼の借金をチャラにしてアイリーン一家を守るため、窃盗の運転手として協力する。
ところがアイリーンの夫は殺される。それは最初からドライバーたちをはめて、マフィアの金を横取りする陰謀だったから。善意が裏目に出たドライバーは、犯罪組織から命を狙われる。やることなすこと裏目に出てしまう。
そこに至ってドライバーの本性が出る。アイリーンを守り、自分の命を狙う組織に復讐するために立ち上がる。とにかくめちゃめちゃ強くで残酷。黒幕たちがドライバーを巻き込んだことに後悔するほど。とにかくエグいよ〜www
ストーリー的にはイマイチ。でも映画としての完成度は高いと思う。好き嫌いのある作品だと思うけれど、ボクはかなり気に入った。物静かなドライバーが豹変するシーンは見ものだよ。この人物の過去を知りたくなるし、その心の闇をのぞいてみたくなる作品だった。
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