死者の想いは切なく悲しい
明日が春分の日ということで、お彼岸の真っ最中。といってもウイルス騒動のせいで、お墓参りに行く人は減っているもしれない。
まぁこんな状況だから、ご先祖さんも了解してくれるかもよ。というかお墓に死んだ人がいるといる考え方自体が、ボクには理解不能なんだけれどね。
もしボクがお墓にいるとしたら、わざわざ電車やバスに乗って感染の危険を負ってまで、お墓まで会いに来てくれなくていいよと言うはず。
本当のところ死んだ人がどう思っているかわからない。
だから死者の言葉や想いは、物語を通じて語られるのだろう。そんな言葉が詰まった小説を読んだ。
『夕暮れをすぎて』スティーブン・キング著という小説。これは短編集で、7つの物語が収録されている。タイトルだけざっと列挙しておこう。
『ウィラ』
『ジンジャーブレッド・ガール』
『ハーヴィーの夢』
『パーキングエリア』
『エアロバイク』
『彼らが残したもの』
『卒業の午後』
という7つの物語。短編といってもスティーブン・キングだからね。かなり怖いよ。そして不思議な世界に誘われる。
実を言うとボクは短編集を読むのが苦手。なぜなら一つの小説を読了したあと、すぐに頭の切り替えができないから。前の物語を引きずっているので、次の物語の世界へ入るのに時間がかかってしまう。だからどうしても読むのが遅くなる。
どの作品も素晴らしかったけれど、ボクが気に入った2作を簡単に紹介しておこう。
『ウィラ』
これは列車事故で亡くなった人たちの視点で書かれた作品。主人公のデヴィッドは、とある駅で同じ列車に乗っていた人たちと引き継ぎの列車を待っていた。途中で事故があり、運行が中断されていたから。
だけどフィアンセのウィラが駅からいなくなり、パニックになったデヴィッドは街へ探しに行く。ずっと列車を待っているのに、もし到着したら乗り損ねてしまうから。街の酒場でようやくウィラを見つけたデヴィッドは、衝撃の事実を知る。
その酒場には大勢の人がいたけれど、自分とウィラだけはこの世の存在じゃなかった。つまり二人と駅で待っている人たちは、すでに列車の事故で命を落としていた。そのことに気づかずに、何年も駅で列車を待っている。エンディグも含めて、とても切ない物語だった。
『彼らが残したもの』
この物語はさらに切ない。主人公のスコットは、ニューヨークの貿易センタービルで働いていた。ところが911のテロが起きたとき、不思議な声を聞いてその日は仕事をさぼってセントラルパークで遊んでいた。その直後にテロが起きて、同僚たちの全てが犠牲になる。
その1年後、彼の自宅に不思議な物が現れる。それは亡くなった同僚たちの遺品。倒壊したビルとともに消えた物ばかりなのに、スコットの部屋に置かれていた。気味悪くなって捨てるけれど、自宅に戻るとそれらの物が先に帰っている。
自分だけが生き残ったことに罪悪感を覚えていたスコットは、同僚たちの愛用品を見て悲しみ、どうしていいのかわからなくなる。最終的に彼がとった行動は、その遺品を持って遺族に会いに行くこと。とても悲しくて切ない物語だった。
他の作品も、鳥肌が立つほど怖かったり、少し笑ったりと、読み応えのある物語たちだった。自宅にこもって退屈している人には、オススメの小説だよ。
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