心なごむ映像だけに辛い
今年のお花見は、買い物の行き帰りの桜だけに限定している。いつもなら須磨浦公園にお弁当持参で出かけたり、福井県までレンタカーを使って美しい桜を愛でていた。でもそれこそ不要不急の外出だから、3月の早い段階で今年は中止を決めた。
その分、テレビの旅番組で桜を楽しめばいい。地元のローカルニュースでも桜の現地中継があるし、昨日の夜は日本中の桜の名所を訪ねる番組を楽しんだ。
そんな旅番組で欠かさず見ているものがある。NHKの『世界ふれあい街歩き』という番組。おそらく過去作品のほとんどを制覇しているはず。
そして今週分も録画して、つい先日に見た。いつもなら心なごむ映像なんだけれど、スタートしてすぐに言葉を失ってしまった。
今週の旅はイタリアのナポリ。たしか過去にも二度ほどちがうパターンで放送されている。ボクの大好きな街なので、以前の再放送でもいいやと思って録画を再生した。
なぜ再放送だと思ったのかは、いまのイタリアの状況を見ればわかるだろう。とてもじゃないけれど新作だと思わなかった。だけどちがった。
テロップを見てびっくり。なんと今年の1月に撮影した映像とのこと。妻と二人で、マジに言葉を失ってしまった。
まだ平和そのもののナポリだった。以前このブログで、ミラノに住んでいる日本人の日記を紹介したことがある。その記事では、2月の上旬でも普段と変わらない様子だった。だから当然ながら、1月のナポリは大勢の人の笑顔で街が輝いていた。
そう思うと本当に切なく、辛かった。この番組を見て、こんな気持ちになったのは初めて。みんな明るくていい人なんだよね。ボクの過去生に南イタリアのものがある。だからイタリアでも、ナポリがある南部にたいして特別な気持ちを持っている。
今回はナポリのスペイン地区がメインだった。この地区にはとても素晴らしい習慣がある。カフェにいって自分のコーヒー代だけでなく、見知らぬ誰かのためにコーヒー代を支払うというもの。そしてそのレシートを出入り口のピンに挿しておく。
するとそのレシートを店内で提示すれば、無料でコーヒーが飲める。以前は治安の悪い地区で移民の貧困層が多かったらしい。それゆえ助け合いの精神で、そうした習慣が今でも残っているとのこと。いまは治安も良くて街は綺麗だけれど、その精神が引き継がれていた。
美容院にも同じ制度がある。高齢者の年金暮らしの人が無料で髪をカットしてもらえるよう、見知らぬ他人の料金を支払う習慣が残っている。カットしてもらった女性がインタビューに笑顔で答えていた。感謝の気持ちでいっぱい、とのこと。
こんな助け合いの精神が残る街でも、ウイルスは容赦なく襲いかかる。イタリアでは減少傾向にあるとはいえ、すでに死者は13000人を超えた。ボクが見ていたナポリの映像からは、想像もできない事態になっている。
言い方は悪いけれど、ある意味貴重な映像だと思う。まだ中国で感染者が出始めたイタリアが、この2ヶ月後に想定外の悪夢を迎える。だけどこの当時は、そんなことを誰も想像しなかっただろう。
命の大切さについて、そして想定外の事態に備える準備をすることについて、真剣に考えさせてくれる貴重な映像だった。来週の火曜日の午前8時にBSで再放送されるので、まだ見ていない人はぜひ。辛いけれど、助け合いの素晴らしさを実感できると思う。
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