不自由さから生まれた『美』
先日このブログでデビューアルバムを紹介したRina Sawayamaのチェックをしている。先日紹介した『XS』という曲は、あえてジャンル分けすればダンスミュージックになる。
だけどブログでも書いたように、彼女の音楽センスはジャンルを超越している。『STFU!』という曲を聴いたとたん、これってハードロックやんか、と叫びそうになった。それでミュージック・ビデオを探してみると、これがまた面白い映像に仕上がっている。
歌詞をすべてチェックしたわけじゃないけれど、映像を観ていて強く感じたことがある。それは欧米人がアジア人に感じている偏見への反発。イギリス在住の日本人として音楽活動をすることで、彼女なりに様々な経験をしているんだと思う。
もしかしたたら差別的なことがあったり、理解されないことにいら立ちを感じていたかも。それがこのロックな曲に集約しているような気がする。外国人としての不自由さから生まれた音楽なんだろう。その激しい反発を『美』に昇華させた彼女の才能はすごいと思った。
そして同じく不自由さを『美』に変容させた人がいる。この映画を観るまで、そんな事実を知らなかった。
『クイーン ヒストリー 1973-1980』(原題:Queen: Under Review 1973-1980)という2005年のイギリスドキュメント映画。
クイーンのデビューから1980年にリリースした『地獄の道づれ』というシングル曲を出したころまでのクイーンの軌跡をまとめた作品。
よくあるドキュメントだと、バンドのメンバーや身近な関係者にインタビューをしたものが多い。でもこの作品は、DJ、音楽評論家、音楽誌記者等の第3者のインタビューを中心にまとめられている。だからより客観的な視点でクイーン を知ることができた。
クイーンの歴史については知っていることばかりなので、ボクにとって新しい事実はない。だけど面白かったのは、クイーンサウンドを分析した解説。これは知らないことがいくつもあった。
クイーンといえばヴォーカルのフレディ・マーキュリーがメインに語られる。もちろん彼がいないクイーンはクイーンじゃない。だけど忘れてはいけないのは、クイーンサウンドの中核を成していたブライアン・メイのギタープレイ。
彼のギターは彼自身が作ったもので、市販されているものじゃない。中学生のときにレプリカモデルが出ていて、どれだけ欲しかったことか。そのブライアンのギタープレイが、どのようにして成り立っていたかの解説にめちゃ興奮してしまった。
もっとも感銘を受けたのが、フレディとの関係。初期のクイーンの曲は、フレディとブライアンがほとんど作曲をしていた。ブライアンの曲は、彼がギターを引きやすいようなコード進行になっている。
ところがフレディはピアノで作曲をする。だからフレディはピアノを弾きやすいように、黒鍵を多く使うコードを多用する。それをギターで弾くと、めちゃめちゃ弾きづらい。
だけどそれゆえ、ブラアインの独自で美しいギターフレーズが生まれた。弾きづらいコード進行ゆえ、普通ではないメロディラインを構成する。結果としてそれがクイーンのサウンドになっていった。これこそ不自由さから生まれた『美』だよね。
バンドの良さはこういうところにある。個性のちがいが化学反応を起こすことで、それまでになかったものが生まれる。ビートルズだってポールとジョンが起こした革命だった。この映画を観て、ますますバンドの素晴らしさを感じることができた。
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