身分と年齢を超えたピュアな愛
いまのように世界が辛い状況のとき、音楽が持つパワーを見直すことが多い。多くのミュージシャンが自宅待機をしつつも、ネットを活用して幸せな気分になれる演奏や勇気づけられるメッセージを発信している。
そしてつい先日、アブリル・ラヴィーンが新しいミュージックビデオをリリースした。モノクロ映像なんだけれど、ボクは感動して涙腺が崩壊した。
曲のタイトルは『We Are Warriors』で、彼女の最新アルバムに収録されていた作品。もともとはライム病と戦ってきた彼女の気持ちを表現した曲だった。でも今回の新型コロナウイルスによる医療従事者の現状を知って、厳しい環境で働く人たちのために歌詞を変更して再収録したとのこと。
「わたしたちは戦士なんだ」という歌詞に合わせて、医療現場で活躍する人の映像がリンクされている。とても素敵なビデオなのでリンクしておこう。
人間というのは、いつの時代もいい意味で戦ってきたんだと思う。だから誰もが戦士なんだね。そして死の間際まで戦い続けた人の実話を映画化した作品を観た。
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(原題:Victoria & Abdul)という2017年のイギリス・アメリカ映画。日本で公開されたのは2019年。晩年のヴィクトリア女王を描いた作品で、写真のジュディ・デンチが主演している。
ボクはイギリス貴族が登場する古い時代の映画が大好き。『いつか晴れた日に』という映画なんて何度観たことか。そしてそんな時代を象徴するヴィクトリア女王はボクのお気に入り。
なぜヴィクトリア女王が好きなったかといえば、これまた映画の影響。『ヴィクトリア女王 世紀の愛』という2009年の映画がある。ボクのイチオシであるエミリー・プラントが若いころのヴィクトリア女王を演じた作品。この映画が最高だった。
わずか18歳で即位して、80代でなくなるまで王位を守ったヴィクトリア女王。彼女を支えていたのは、夫のアルバートと首相のメルバーン。でもそれは彼女が働き盛りの時代のこと。晩年のヴィクトリア女王は孤独だった。
そんな彼女を癒したのがインド人の青年。ヴィクトリア女王にインドの金貨を献上する役を任せられて、生まれて初めてインドを離れる。そのとき女王に気に入られたアヴドゥルという青年は、世話役としてイギリスに残ることになる。
ヴィクトリア女王は、彼を異性として愛していたんだだろうね。だけど年齢も身分もちがう。だからそういう意味ではピュアな愛だと言っていい。アヴドゥルが結婚していることを知った女王はショックを受けるけれど、彼の家族をインドへ呼び寄せて自分の近くに住まわせる。
アヴドゥルは野心家でもあったので、ヴィクトリア女王を利用して出世したのかもしれない。でも女王と親しく接するうちに、彼もまたピュアな愛を抱いたんだと思う。頑固で強権を発動する女王に反発する人が多いなか、必死で彼女を守っていたのはアヴドゥルだけだったから。
結果としてヴィクトリア女王が崩御されると、側近や皇太子に疎まれていたアヴドゥルはインドへ追い返される。そして彼に関する記録が隠滅された。ヴィクトリア女王は彼に男爵の爵位を与えようとしたほどだから。
ところが2010年になってアヴドゥルの日記が発見された。それによって二人の交流が明らかになった。つまりこの映画は、実話に基づいて作られた作品らしい。そう思って観ていると、権力者の孤独が痛いほど伝わってきた。彼女も死ぬまで戦士だったんだね。
図書館が以前のように開館されたら、ヴィクトリア女王に関する書籍を読んでみようと思う。早くウイルスが終息しますように。
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