本物の死神に取り憑かれた人
小説や映画というのはフィクション。そう思って読んだり観たりしているから、どれほど悲惨な物語でもエンドマークが出れば忘れる。
ところが今日観た映画は、それができなかった。なぜならフィクションの世界が、現実とリンクしていたから。ちょっと怖い出来事。
『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』という2013年のアメリカ映画。霊視能力がある主人公が活躍する物語で、予備知識なしで観たけれどこれが意外に面白かった。それどころかラストで想定外の展開があって、不覚にも泣いてしまった。CGもいい出来なので、絶対に観て損はない作品。
主人公のオッドは霊視能力がある。だから幽霊から真実を教えてもらうことで、犯罪者逮捕に協力していた。周囲の人からは変人だと思われているけれど、彼の能力を知る警察署長、そしてストーミーという恋人は彼のことを理解していた。
オッドはボダッハという化物が見えることがある。いわゆる死神のようなもので、死期が近づいた人間に寄り添い、死んだときにそのエネルギーを奪う。そのボダッハは見えても無視しなければいけない。
もし見えていることを知られると、殺されてしまうから。かつてオッドの友人だった霊能力者は、オッドにボダッハが見えたことを話した。するとその直後に自動車にはねられて死んでいる。
そのボダッハが大量に現れた。地獄の釜が開いたような状態で、数えきれないほどのボダッハが街を埋め尽くしている。つまりこの街で大量殺戮が起きることを意味していた。オッドは警察署長とストーミーに手伝ってもらうことで、その真相を暴こうとする。
詳細は映画のほうが面白いので、これ以上のネタバレはやめておこう。最後まで観ればボクがなぜ泣いたのかもわかるはず。くそっと思ったけれど、マジで泣いてしまった。
この映画の終わり方を観ていると、どうも続編がありそうな気配。そしてオッドを演じた俳優さんも見覚えがある。それで続編を期待しつつ調べてみた。
ボクが気になったのはオッドがラストで犯人と戦うとき、ボダッハの集団に「邪魔をするな!」と言ったこと。つまり死神が見えることを公言している。
だとしたら交通事故で死んだ友人のようなことにならないだろうか? もしかしたら続編はボダッハとの戦い? それで調べることにした。
オッドを演じたのはアントン・イェルチンという俳優さん。新しい『スタートレック』シリーズに出演していたので、ボクの記憶に残っていた。そして彼の略歴を見て真っ青になった。
アントンは2016年に亡くなっていた。それも不慮の自動車事故。エンジンをかけたまま車を停めていて、動き出してしまった車と建物に挟まれて亡くなっている。あまりに驚いて言葉にならなかった。
この映画は、彼の未来を暗示しているような気がした。ボダッハが見えることを口にしたオッド役のアントンが、映画のなかの友人と同じように普通じゃない車の事故で死ぬなんて……。
ということで続編は望めそうもない。配役を変えても、オッドの雰囲気は出せないだろう。それほどアントンという俳優さんにピッタリの役だったから。あり得ないことだけれど、本物のボダッハがオッドを演じたアントンに取り憑いたような出来事。かなりショックだった。
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