今年一番に泣き崩れた瞬間
世の中にはひどい出来事が数えきれないほどある。21世紀になって久しい現代でさえ、理不尽なことがいくつも起きている。
ましてや第二次世界大戦のころなら、世界中で日常茶飯事のようにおぞましいことがあったはず。今日観た映画はフィクションだけれど、おそらく同じようなことが起きていただろう。とても辛い物語だった。
でもラストに救われる。このエンディングのおかげで、すべてを許せる気持ちになれる。そのシーンを観たときのボクは、おそらく今年一番と言っていいほど、感動で激しく泣き崩れた瞬間だった。
『ローズの秘密の頁』(原題:The Secret Scripture)という2016年のアイルランド映画。マジですごい映画に出会ってしまった。
なんと40年以上も精神病院に閉じ込められた女性の物語。その病院がホテルとして改装されることになり、主人公のローズという老女は新しい施設に移動しなくてはならない。ローズは自分の子供を殺したことで、この病院に収容されていた。
だけどローズはここにいると言い張る。なぜなら自分は息子を殺していない。そしていつか必ず、息子がここへ迎えに来て連れ出してくれると信じていた。だから絶対に動こうとしない。そのローズの回想として物語は進行する。最初の写真は若いときのローズ。1942年のアイルランドが舞台。
そして老人となったローズはこんな雰囲気。
そんなローズに対して、グリーンという若い医師が再診察をすることになった。大司教から理由のわからない依頼があり、どうしても彼女の精神状態を診察して欲しいとのこと。ローズに会ったグリーンは、幻覚や妄想を抱いていると判断する。だけど彼女が書き残していた日記を見て、正常かもしれないと思い始める。
結論から言うと、ローズが精神病院に収容されたのは陰謀だった。彼女はマイケルという男性と恋に落ちる。両親がいないローズは、二人だけでひそかに結婚ををする。だけどマイケルはナチスドイツと戦うために戦争に行った人間だった。
実はこの部分が難しい。イングランドは連合国としてドイツと交戦している。だけどアイルランドはイングランドに反発して中立を維持していた。だからアイルランド人でありながらナチスと戦おうとするマイケルのような人間は、裏切り者として命を狙われてしまう。ここにも理不尽が存在していた。
結果としてローズは妊娠していたのに、マイケルは反イングランドの人間に殺されてしまう。そのうえ、ローズはひどい嫉妬を受ける。ゴーント神父は彼女を愛していた。だけど裏切り者であるうマイケルに彼女を奪われたことに怒り狂う。
それでローズが色情狂であるという嘘の報告書を書くことで、彼女を精神病院に閉じ込めてしまう。それほど神父という存在は影響力を持っていた。そこから40年だよ。本当にひどい。
やがてローズはマイケルの子供を出産する。男の子だった。だけど生まれたての子供を殺した罪で、さらに病院から出られないようになる。同じく彼女を告発したのがゴーント神父だった。クソ野郎だね!
つまりローズは冤罪によって、40年間も精神病院に閉じ込められていた。そのことを彼女の日記と証言から確信したグリーン医師は、彼女を救おうとする。ところがここで衝撃的な事実が明らかになる。この映画を観て感動したい人は、ここでさようなら〜〜〜!
さて、ネタバレするよ!
グリーン医師はローズとマイケルの息子だった。ゴーント神父は死の間際、自分の罪を告白した。ところがそれを知らされたグリーンの里親だった父親も、急病で話せないまま他界した。だけど息子に宛てて手紙を残していた。そこに真実が書かれていた。
そして病院から強制退去しなければいけない日。グリーンは母のローズを迎えに行く。この感動のシーンに、マイケルとの思い出のシーンが重なる。もうアカン。思い出しただけで泣けてきた。この無駄に長いブログを見たら、ボクがどれだけ興奮しているかわかるだろうねwww
若いローズを演じたのが、ルーニー・マーラという女優さんで、『ドラゴンタトゥーの女』というボクの大好きな作品で主人公のリスベットを演じた人。そして老人のローズを演じたのが、ヴァネッサ・レッドグレイブという多くの賞を受賞している名女優。
やっぱりイギリス俳優さんたちは最高。前半のムカムカする気持ちが、ラストで一気に感動へと昇華する。その快感は言葉で説明できない。本当に素晴らしい作品だった。
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