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高羽そらさんインタビュー

9歳の少女の命を救った幻覚

人間には自分を守ための防御本能がそなわっている。重傷を負って耐え難い痛みを経験したとき、気絶するのもそうした機能が働いているからだと思う。

 

心理的にも防御反応が働くはず。トム・ハンクスが主演した『キャスト・アウェイ』という映画を観たことがあるだろうか? 無人島にたった一人で残されて、そこから生還するまでの物語。

 

この主人公を救ったのはウィルソン製のバレーボール。そのボールをウィルソンと名付けて擬人化して話しかけることで、主人公は強烈な孤独から自分を守った。ラストで『ウィルソ〜ン!」とボールに呼びかけるシーンは、彼のウイルソンに対する愛情が本物だったとわかる。

 

同じようなシチュエーションで、孤独に打ち勝った少女の物語を読んだ。

 

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『トム・ゴードンに恋した少女』スティーブン・キング著という小説。この物型にはピエロの怪物も、ホテルのドアを斧で破って家族を殺そうとする父親も、作家を自宅に閉じ込めて虐待をくり返すストーカー女性も出てこない。物語のほとんどは、少女の行動で完結する。

 

主人公はトリシアという9歳の少女。熱狂的なレッドソックスのファンで、お気に入りは抑えの切り札ビッチャーであるトム・ゴードン。両親は離婚したばかりで、親権を持つ母と兄の3人暮らし。

 

兄のピートは両親の離婚が不満で、母親と喧嘩ばかりしている。週末には3人で外出することが恒例になっていた。その日はハイキングに出かけたけれど、いつものように母と兄は口論している。トイレに行きたくなったトリシアは、二人を放置してハイキングコースから外れた。そして道に迷ってしまう。

 

ここからが彼女の一人舞台。最初は気丈に振るまっているけれど、やがてことの重大さに怯える。最終的に発見されるまで、トリシアは1週間も山中をさまようことになった。

 

持ってきたお弁当はすぐになくなる。食料は木の実だけ。大量の蚊やスズメバチに襲われるし、そこらに鹿の死体が転がっている。生水にあたってお腹をこわしたり、肺炎まで起こしている。それゆえ高熱によって幻覚を見るようになった。

 

トリシアを救ったのはトム・ゴードンの幻覚。なぜピンチに追い込まれても、あれだけ冷静にピッチングができるのかを、彼女は幻覚のトムに教わる。困ったことがあるたびにトムに助けを求め、どうにか切り抜けていく。

 

とにかくトリシアのキャラが最高。たった9歳なのに必死でサバイバルの方法を身につけていく。物語を読み進めていくことで、読者は彼女の強さが自分に伝染してくるのを感じるはず。そして同時に弱りつつある彼女の肉体に心が痛む。

 

ラストシーンが最高だった。熊に襲われてトリシアに危険が迫る。そのとき彼女に勇気を与えたのはトムの幻覚であり、彼のピッチング技術だった。だけど投げたのはボールではなく、1週間のあいだ野球中継を聞くことを楽しみににしていた彼女のウオークマン。これをボールに見立てて投げる。

 

熊はその動作に驚いたことで、トリシアは九死に一生を得る。迷子になった少女が助かるだけの物語なのに、最後の最後まで興奮した。さすがスティーブン・キングだよなぁ。これは是非とも映像で観たいと思った。

 

それで調べてみると、昨年から映画化の動きが進行中らしい。これはメチャ楽しみ。トリシアの幻想世界を、きっとCGが見事に再現してくれるだろう。そして新しい子役のスターが登場するかもしれないね。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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