あの魔女は、以前も魔女だった
物語の続編は、時系列にしたがって創作されることが多い。ある物語が完結して、その後の世界で新しい物語が展開していく。
ところが続編として刊行されたのに、実はそれ以前を語ったものだったという小説を読んだ。ラスト近くまで本当の意味での続編だと思い込んで読んでいたから、前の作品の冒頭につながったときにはビックリ。さすが日本一のミステリー作家だよね。
『魔力の胎動』東野圭吾 著という小説。2015年に『ラプラスの魔女』という小説が出版されている。主人公は羽原円華という若い女性で、脳神経外科の天才医師である父親の手術を受けて、特殊な能力を持つことになった。
その能力とは、彼女の周囲で起きるすべての物理法則を知覚できて、かつ次の動きまで予測できるというもの。『ラプラスの魔女』では、その能力を使うことで殺人事件の解決に手を貸している。この作品は映画化されていて、羽原円華を演じたのは広瀬すずさん。
とにかく『ラプラスの魔女』という小説はすごい作品。いままでの東野さんのパターンとはまったくちがう世界観があって、何度も読みたくなるような物語だった。とにかく羽原円華というキャラがユニークでいいんだよね。
ようやく彼女が活躍する新しい小説が出版されたということで、ボクはずっと楽しみにしていた。ところが最初に書いたように、これは続編ではなく『ラプラスの魔女』につながる物語だった。ラスト近くまでそのことがわからない。『魔力の胎動』というタイトルの意味が、そのときになってようやくわかった。
『魔力の胎動』の語り手は、工藤という鍼灸師の男性。彼と羽原円華との出会いは北海道だった。工藤の顧客であるベテランのスキージャンパーが関わる。かつては日本でトップのジャンパーだったけれど、怪我をしたことで引退を決意していた。ところが羽原円華が関わったことで、奇跡が起きる。
それ以外にも、ある魔球を投げるプロ野球のピッチャーとそれを受けるキャッチャー。発達障害を持つ息子が水の事故で植物人間になったことに責任を感じている教師。そして自分がゲイであることをカミングアウトしたことで、パートナーの男性が自殺したことを悔いているピアニストも救う。
工藤と羽原円華が協力することで、科学的に、そして物理学的なアプローチで苦しんでいる人たちを助けていく。ネタバレはこの程度にしておこう。二人の見事な活躍を知りたい人は、本を手にしたほうがいいからね。
もちろん工藤も羽原円華によって救われる。そして工藤は『ラプラスの魔女』の登場人物たちと深いつながりを持っていた。ラスト近くでそのことが明らかになり、物語が続いていく。だからもう一度『ラプラスの魔女』読みたくなってしまう。
つまり真の魔女、いや魔法使いは、東野圭吾さんということだろうねwww
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